Sweet Delicious Special day-14th. Feb.
2月14日。
世に言うバレンタインデー。
リアの泣き声に起こされた俺たち夫妻。
リアは本当なら今日生まれる予定だった。
生まれてからもう10日。されど10日。
少しずつ少しずつ毎日成長していく幼い天使。
その声に飛び起きて向かう妻は俺に一言言って出て行った。
「シン君、今日迎賓館にギョン達を集めておいてね。」
以前から言われていて、「ああ」とだけ答えて見送った。
妻が言うには女性陣とそれぞれの子供、ただし女の子限定だが、彼らは先に行き、何かを用意するという。
まあ大概は予想がつくが、何も言わない。
男性陣だけを迎賓館に集め、待っていろということらしい。
それにはなぜか、父上も含まれていた。
迎賓館…。
ほぼ俺たちの友達を招待するときに使われている館。
本来なら名前の通りなのだが、ほぼ俺たちの遊び場と化していた。
誰も文句を言われていないので、いいのだろうと思って使っている。
午後3時。
約束の時間にみな迎賓館に集まった。
レイを父上に任せ、あーだこーだと話している最中に妻たちは現れた。
長テーブルに均等に3か所にチョコレートフォンデュが置かれ、その周りにはカットされたバナナ、イチゴなどのスイーツ、マシュマロなどが置かれた。
それぞれが席に着いた頃、妻のあいさつで開催された。
もちろん俺の傍には妻であるチェギョンだが。
「今日は2月14日でバレンタインデーです。本当ならここにいるリアは今日生まれる予定でした。
せっかちみたいで早めに生まれましたが。 これもここにいる皆さまのおかげです。
ありがとうございます。今日は感謝の気持ちをこめて、このような席を設けました。
楽しんでいってください。
シン君、アレ用意してくれた?」
【わかったよ】と目線で送り、俺はいそいそと取りだす。
お気に入りのワインを一本取り出し、それぞれの席に用意されているワイングラスに俺自身で注いでいく。
それを振るまえと妻からの命令だった。
青天の霹靂。
おそらくそう誰も思っているだろう。
妻はニコニコとその様子を見ていたが。
まあ、彼女が笑っているならこんな奉仕もいいだろう。
なんとも甘い俺だが。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。
少しの時間ではございますが、日ごろの感謝を込めまして、楽しんでいただけたらと思っております。
これからも私たちをどうぞよろしくお願いします。」
注ぎ終わった後、俺も皆に挨拶をした。
妻から乾杯の音頭がとられ、皆はチョコレートフォンデュに舌鼓を打つ。
お互いの口においしそうに入れていく者。
子供達がおいしそうに口にたっぷりチョコレートをつけ、これでもかとほおばったり。
それぞれ楽しそうに過ごしていった。
「シン君、ハッピーバレンタインデー!!リアをありがとう!!」
そう言うと、俺の口にチョコレートをつけたイチゴを入れる。
思わず口をあけ、黙って受け入れる。
その姿をとても微笑んで見ている俺の両親。
「パパ、あ~ん。」
メイからそう言われ、口にチョコレートバナナが入れられる。
妻はレイの口にキュウイを入れていた。
「シン。」
誰かからそう言われ、声のほうに振りかえると、口に何かを入れられた。
メロンだった。
そしてその声の主は、意外な人物、母上だった。
メロンをかみしめながら、目が飛び出るかというくらいの驚きだった。
妻もびっくりしたのか、口があんぐりと開いていた。
母上はそんな俺たちの顔を見ながら、手を口もとで抑え笑っている。
シン。――――
そう言われたのはどれくらいぶりだろう。
宮廷に上がるまで呼ばれていたその名前。
泣きそうになるのをどうにか抑え、俺も笑って尋ねる。
「お母さん、どれがいいですか?」
俺もあえて【お母さん】と言う。
「いちごをもらおうかしら。」
母上はその言葉に何も注意などせず、笑って答える。
注文通り、チョコレートがかかったイチゴを母の口に持っていく。
同じように口をあけ、おいしそうにかみしめる。
母の目にも涙があった。
きっと俺にもあった。
肩にそっと誰かの手が置かれた。
上を見上げると妻が目に涙を溜め、今にも流れ落ちそうだった。
俺は涙を拭こうと手を伸ばした。
「シン君、よかったね。…よかったね。」
遅かった。
涙は俺の頬に落ちた。
「お前が泣いてどうする?」
あきれながらも手を差し伸べ、彼女の涙を拭う。
それでもあふれ落ちろ涙。
「……だって……。」
俺は椅子から立ち上がり、彼女を抱きしめる。
抱きしめながら、涙が頬を伝う。
妻のように声に出して泣きはしないが、嬉し涙が伝っていく。
彼女の肩に唇を落とし、そこにうずくまる。
彼女も俺の胸の中で泣き続ける。
どのくらいそうしていただろうか。
やっとのことでお互いを離し、涙を拭う。
「ホント、シンて変わったよな。」
呑気にギョンが声を掛ける。
「結婚してからどんどん変わった。よかったな。」
俺は否定も肯定もせず微笑んだ。
そうやって、和やかな時間は過ぎて行った。
もうチョコレートは一年間は見たくなしい、食べたくない。
そんな境地に陥るまで食べつくした。
車止めまで皆を送る。
おいしかった、たのしかったと口々に言い、帰っていく。
最後は父上と母上を昌徳宮まで送っていく。
玄関先で、俺は不意に抱いていたリアをチェギョンに預け、母上を抱きしめた。
「お母さん、ありがとう」
と囁いて。
抱き締めていた腕を離し、微笑むと、父上を同じように抱きしめた。
「お父さん、ありがとう」
同じように囁いて。
お母さん、お父さん、ありがとうございます。
あなたがたの息子は今、とても幸せです。
お母さん、あなたの息子に生まれてよかった。
お父さん、あなたの息子に生まれてよかった。
ありがとうございます。
リアを乳母車に寝かせ、レイとメイをはさんで、手をつなぎ歩きだす。
お祖父様、あなたの孫は今とても幸せです。
チェギョンに出会わせてくれたこと、感謝しています。
「シン君、今年のバレンタインデー、忘れられないね。」
「ああ。」
そう呟いて、俺はそっと妻にキスをした。
――――チェギョン、こんな素敵なバレンタインデーをありがとう―――――
fin.
世に言うバレンタインデー。
リアの泣き声に起こされた俺たち夫妻。
リアは本当なら今日生まれる予定だった。
生まれてからもう10日。されど10日。
少しずつ少しずつ毎日成長していく幼い天使。
その声に飛び起きて向かう妻は俺に一言言って出て行った。
「シン君、今日迎賓館にギョン達を集めておいてね。」
以前から言われていて、「ああ」とだけ答えて見送った。
妻が言うには女性陣とそれぞれの子供、ただし女の子限定だが、彼らは先に行き、何かを用意するという。
まあ大概は予想がつくが、何も言わない。
男性陣だけを迎賓館に集め、待っていろということらしい。
それにはなぜか、父上も含まれていた。
迎賓館…。
ほぼ俺たちの友達を招待するときに使われている館。
本来なら名前の通りなのだが、ほぼ俺たちの遊び場と化していた。
誰も文句を言われていないので、いいのだろうと思って使っている。
午後3時。
約束の時間にみな迎賓館に集まった。
レイを父上に任せ、あーだこーだと話している最中に妻たちは現れた。
長テーブルに均等に3か所にチョコレートフォンデュが置かれ、その周りにはカットされたバナナ、イチゴなどのスイーツ、マシュマロなどが置かれた。
それぞれが席に着いた頃、妻のあいさつで開催された。
もちろん俺の傍には妻であるチェギョンだが。
「今日は2月14日でバレンタインデーです。本当ならここにいるリアは今日生まれる予定でした。
せっかちみたいで早めに生まれましたが。 これもここにいる皆さまのおかげです。
ありがとうございます。今日は感謝の気持ちをこめて、このような席を設けました。
楽しんでいってください。
シン君、アレ用意してくれた?」
【わかったよ】と目線で送り、俺はいそいそと取りだす。
お気に入りのワインを一本取り出し、それぞれの席に用意されているワイングラスに俺自身で注いでいく。
それを振るまえと妻からの命令だった。
青天の霹靂。
おそらくそう誰も思っているだろう。
妻はニコニコとその様子を見ていたが。
まあ、彼女が笑っているならこんな奉仕もいいだろう。
なんとも甘い俺だが。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。
少しの時間ではございますが、日ごろの感謝を込めまして、楽しんでいただけたらと思っております。
これからも私たちをどうぞよろしくお願いします。」
注ぎ終わった後、俺も皆に挨拶をした。
妻から乾杯の音頭がとられ、皆はチョコレートフォンデュに舌鼓を打つ。
お互いの口においしそうに入れていく者。
子供達がおいしそうに口にたっぷりチョコレートをつけ、これでもかとほおばったり。
それぞれ楽しそうに過ごしていった。
「シン君、ハッピーバレンタインデー!!リアをありがとう!!」
そう言うと、俺の口にチョコレートをつけたイチゴを入れる。
思わず口をあけ、黙って受け入れる。
その姿をとても微笑んで見ている俺の両親。
「パパ、あ~ん。」
メイからそう言われ、口にチョコレートバナナが入れられる。
妻はレイの口にキュウイを入れていた。
「シン。」
誰かからそう言われ、声のほうに振りかえると、口に何かを入れられた。
メロンだった。
そしてその声の主は、意外な人物、母上だった。
メロンをかみしめながら、目が飛び出るかというくらいの驚きだった。
妻もびっくりしたのか、口があんぐりと開いていた。
母上はそんな俺たちの顔を見ながら、手を口もとで抑え笑っている。
シン。――――
そう言われたのはどれくらいぶりだろう。
宮廷に上がるまで呼ばれていたその名前。
泣きそうになるのをどうにか抑え、俺も笑って尋ねる。
「お母さん、どれがいいですか?」
俺もあえて【お母さん】と言う。
「いちごをもらおうかしら。」
母上はその言葉に何も注意などせず、笑って答える。
注文通り、チョコレートがかかったイチゴを母の口に持っていく。
同じように口をあけ、おいしそうにかみしめる。
母の目にも涙があった。
きっと俺にもあった。
肩にそっと誰かの手が置かれた。
上を見上げると妻が目に涙を溜め、今にも流れ落ちそうだった。
俺は涙を拭こうと手を伸ばした。
「シン君、よかったね。…よかったね。」
遅かった。
涙は俺の頬に落ちた。
「お前が泣いてどうする?」
あきれながらも手を差し伸べ、彼女の涙を拭う。
それでもあふれ落ちろ涙。
「……だって……。」
俺は椅子から立ち上がり、彼女を抱きしめる。
抱きしめながら、涙が頬を伝う。
妻のように声に出して泣きはしないが、嬉し涙が伝っていく。
彼女の肩に唇を落とし、そこにうずくまる。
彼女も俺の胸の中で泣き続ける。
どのくらいそうしていただろうか。
やっとのことでお互いを離し、涙を拭う。
「ホント、シンて変わったよな。」
呑気にギョンが声を掛ける。
「結婚してからどんどん変わった。よかったな。」
俺は否定も肯定もせず微笑んだ。
そうやって、和やかな時間は過ぎて行った。
もうチョコレートは一年間は見たくなしい、食べたくない。
そんな境地に陥るまで食べつくした。
車止めまで皆を送る。
おいしかった、たのしかったと口々に言い、帰っていく。
最後は父上と母上を昌徳宮まで送っていく。
玄関先で、俺は不意に抱いていたリアをチェギョンに預け、母上を抱きしめた。
「お母さん、ありがとう」
と囁いて。
抱き締めていた腕を離し、微笑むと、父上を同じように抱きしめた。
「お父さん、ありがとう」
同じように囁いて。
お母さん、お父さん、ありがとうございます。
あなたがたの息子は今、とても幸せです。
お母さん、あなたの息子に生まれてよかった。
お父さん、あなたの息子に生まれてよかった。
ありがとうございます。
リアを乳母車に寝かせ、レイとメイをはさんで、手をつなぎ歩きだす。
お祖父様、あなたの孫は今とても幸せです。
チェギョンに出会わせてくれたこと、感謝しています。
「シン君、今年のバレンタインデー、忘れられないね。」
「ああ。」
そう呟いて、俺はそっと妻にキスをした。
――――チェギョン、こんな素敵なバレンタインデーをありがとう―――――
fin.