葵香の勝手 宮小説の世界

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LOVE PHANTOM

LOVE PHANTOM 特別編 カワラヌオモイ

約20年ぶりの出産はかなり身体にこたえた。 しかしながら、どんなことがあっても産みたかった赤ん坊。 『再初産』と自ら名付けたその名にしっくりくる出産だった。 「私って女っ腹?」 そうふと呟いてみるが、産まれた子は何が楽しいのかキョロキョロ周り…

LOVE PHANTOM -番外編- 生まれいずる命

寒い寒い冬がすぐそこまで春を呼び寄せようとする季節の中、新しいひとつの命が生まれた。 「あ~、しんどかった・・・」 出産したその女性はそうつぶやいた。 なんせ、約20年ぶりの出産。 20年前の初産以来の出産だから本人曰く、「再初産」と命名した…

LOVE PHANTOM episode 95 -endloge-

シン達一行はとある場所にいた。 この場所は今は亡き聖祖陛下とその妻、太皇太后が眠る場所。 皇室所有のとある地方の森の中にその場所はあった。 何でもこの二人の思い出の地なのだそうだ。 それをシンはまだ太皇太后である祖母が生きていた頃、教えられた…

LOVE PHANTOM episode 94

その次の春、シンとチェギョンは結婚を公式発表した。シンはプロポーズ後、驚異的な回復力を見せ、約一ヶ月後、国民の前に姿を現した。その横には陰ながらチェギョンが付き添いを見せていた。それを見たある者は「彼女は何者だ?」と疑問を投げかけた。また…

LOVE PHANTOM episode 93

「はああ~~~~」 あまりの声の大きさにシンは思わず携帯を切ってしまった。 そして、チェギョンの顔をのぞくと、彼女は怒っているように見えた。 実際、彼女は怒っていたのだが。 シンにはなぜチェギョンが怒っているのか全く分からなかった。 「『結婚す…

LOVE PHANTOM episode 92

シンのリハビリは順調に進んでいった。 毎日毎日チェギョンが付き合い、仲良く支え合っていた。 時に喧嘩することもあったが。 とうとうシンは松葉杖で歩けるようになった。 国民にはずっと『病気療養中』とだけコメントされており、心配する国民は早く回復…

LOVE PHANTOM episode 91

「で、母上、どうするのですか?本当に復讐をなさるのですか?」 ハハハっと笑い合っていたが、チェヨンはにこりと笑ってそう聞いてきた。 「う~ん、どうしようかな?やってもいいけど、後が怖いのよね~。 今はああだからいいのだけれど、足腰がピンピンに…

LOVE PHANTOM episode 90

「もうシン君!!いい加減にして!!」 チェギョンの怒鳴り声がシンの寝室から響き渡る。 それはもう日常茶飯事となって周囲の者には受け入れられていた。 シンの悪い癖なのだろうか、ついついチェギョンをからかってしまう。 チェギョンは顔を真っ赤にさせ…

LOVE PHANTOM episode 89

長い長いトンネルを歩く。 時に走る。 いつまで経っても出口は・・・ない。 チェギョンのいない世界。 心許せる存在がいない世界。 走る! 走る! 走る! それでもいつか光溢れる出口が見えてくると願って…。 見えた! 光が差し込んでいるのが見えた。 もう…

LOVE PHANTOM episode 88

ミンスやチェヨンは示し合わせたように、交互に夜中に東宮殿へ訪れる。 その理由はチェギョンはいつの間にか掛け布団を床に落とすという得意技を持っているためだった。 わざわざ掛け布団をかけるためにやってくる。 そしてシンの顔を見て去るのが決まりごと…

LOVE PHANTOM episode 87

東宮殿のシンの寝室には様々な物が運び込まれ、様変わりしていた。 ベッドの周囲の機械は必要不可欠だが、チェギョンが寝る為の簡易ベッド、昼間シンの傍で作業できるようにミシンが置かれていた。 また、彼らの友人たちはいつでも来られるように特別な出入…

LOVE PHANTOM episode 86

娘とその両親は20年ぶりの再会に会話の花を咲かせた。 それは許される時間ぎりぎりまで全く尽きることがなかった。 チェヨンはその様子を間近で見ながら、「どうしてこう大声で話せるのか…」と不思議に思った。 宮の中でこうも話せるのはせいぜい伯母のヘ…

LOVE PHANTOM episode 85

チェヨンはその日の夜、イジュンを呼び出した。「イジュン、君のご両親は今も健在か?」チェヨンはとある計画を立てていた。それを実行するには彼がいる。母の弟である彼が・・・。「はい。父は今も食堂で元気よく働いております。 母は保険外交員として部下を…

LOVE PHANTOM episode 84

「お祖父様、かの人はどなたかご存知でしょうか?」 チェヨンは出て少し廊下を歩いたとき、いてもたってもいられず、ヒョンに聞いてみた。 「わしはあの人は遠い親戚としかしらん。ウンギョクのほうがよく知っているだろうよ。」 そう言いながら、ヒョンはウ…

LOVE PHANTOM episode 83

「もちろんチェ尚宮は今でも父に仕えていますが、胎を貸しただけですので、あしからず。 くだらない妄想はやめていただきたい。不愉快なので…。」 チェヨンはにこっと微笑んだ。 「では、シン・チェギョンの卵子をどのように取ってきたのか・・・。 これ、僕…

LOVE PHANTOM episode 82

チェヨンは自分の後ろに隠し持っていた書類を出してきた。 それをウンギョクに無言で渡した。 ウンギョクはそれを座っている一番端の人間に回覧ように指示した。 最初に見た人物はこれまた驚き慄く。 それをまた次の者に渡した。 彼の隣の人物は一体何をびっ…

LOVE PHANTOM episode 81

「そうなったら殴りたいだろう?僕を殺したいと思うだろう? もしかしたらあなたなら僕を殴れるのかもしれない。 でも、あの当時の府院君夫妻は一切口を閉ざした。」 今更ながら思う。 よくできた人たちだったと…。 父は今でも彼らに頭が上がらないだろう。 …

LOVE PHANTOM episode 80

「内親王であれ親王であれ引き離し、宮廷で教育するのがならわしだと言ったな…。 では、その立場になったらどうするんだ?それでも引き離すのか? たとえ話をしよう。確かあなたには僕と同い年くらいの娘がいたな…。」 チェヨンはにこりと笑ってRを見ていた…

LOVE PHANTOM episode 79

「この皇室は・・・父はあなたたちに守られてきたわけでもない。 脈々と受け継がれた規律で守られてきたわけでもない。 父が皇室を廃止しなかったのは・・・させなかったのは、シン・チェギョンの一言で廃止しなかった だけだ。 この皇室はシン・チェギョンによって…

LOVE PHANTOM episode 78

「皇太子殿下、一つ質問してよろしいでしょうか?」 この状態で質問してきた人間がいた。 ――ああ、やっとお出ましか・・・、R―― 本当に覚えたくないものである。 またもう一人の裏で動いていた人間。 普段は温厚に見えるこの人物は、裏ではとんでもない非道な…

LOVE PHANTOM episode 77

「イ・シンとイ・ミンスの関係は何だと思いますか、皆さん。」 チェヨンはにこりと満面の笑みを浮かべ、会衆を見まわした。 「あのー…、もしかして親子ではありませんか?年齢から言って当てはまるかと思うのですが。」 ひ弱そうな一人の男性が勇気を振り絞…

LOVE PHANTOM episode 76

「明白?どうして明白だと言い切れる?その理由が知りたい。」 チェヨンは二コリと笑っている。 しかしその笑みは周りの者には不敵な笑みに見えた。 また、ある者にはシンがそこにいるように錯覚して見えた。 「もう20年前に別れている二人です。しかも何…

LOVE PHANTOM episode 75

宗親会の総勢たるメンバーが一同に招集された。 しかも今まで一度もない皇太子からの呼び出し。 何事かと息巻く彼ら。 ある者は以前より打診していた皇太子妃選出の件についてだと考えていた。 自分の娘をどのようにして皇太子妃に選出させようか、内心微笑…

LOVE PHANTOM episode 74

インはユルを空港まで迎えに来ていた。 到着時間は先日の電話で聞いていた。 ユルがインに電話してきた場所はなんとヒースロー空港からだった。 もうあと数時間後に出発するという。 インは急いで到着時間に迎えに行こうと考え、すぐさま会社と連絡を取り、…

LOVE PHANTOM episode 73

「インか?資料がそろったので帰国するよ。そっちはどうだ?」 あれ以来、20年経った後、再会した有志たちとの交流。 ――シン、これさえも見過ごしていたのか?―― 20年という月日を経て、あの当時の関係者が揃おうとしている。 まるで時間を巻き戻すかの…

LOVE PHANTOM episode 72

その頃、ユルはイギリスの自宅でDNA結果の書類を受け取っていた。 シンからいつか送られてきた彼自身の毛髪。 ――もし何かあった時使ってくれ―― ふざけて送ってきたのか、何かの予兆があったのか…。 それを知る術は今はない。 「シン・・・僕を買いかぶり…

LOVE PHANTOM episode 71

「エリック、ありがとう・・・。思い出してくれてありがとう。 ミンスを・・・この子を、シン君に会わせてくれてありがとう。 ・・・本当にありがとう。」 チェギョンはどうにか伝い落ちる涙をぬぐい、エリックとミンスのもとへ戻った。 そしてエリックの手を握り締め…

LOVE PHANTOM episode 70

忘れていた。 忘れていたが、ミンスが韓国へ行った後、見送りに行った後、どこか心の中にざわめきがあった。 それが何なのか、記憶を探るのに苦労した。 そして思い出したのだった。 何かを貰ったことを。 いや、送られてきたことを。 そしてそれを屋根裏の…

LOVE PHANTOM episode 69

あの日、エリックとミンス、そしてエリックの母親が買い物に出かけた。 それがすべての始まりだった。 エリックの母親は数点まだ買い物があるとミンスとエリックを先に帰すよう促した。 エリックは母の言葉を了承し、ミンスの手を引きながら帰って行った。 …

LOVE PHANTOM episode 68

「それは僕が13歳の時のものです。当時ミンスは3歳でした。」 エリックは淡々と答える。 ミンスも一体何を見ているのか、覗いてみた。 「ミンス、お前は覚えていないだろうよ。」 実際言われた通り覚えていなかった。 こんな写真を撮られた記憶ももちろん…