葵香の勝手 宮小説の世界

yahooブログ「Today is the another day」からこちらに移行しました。

∟ONE

大切な存在-ONE それぞれの愛し方10

「うわぁ~、やっぱり皇室の離宮ってどこも素敵よね。やっと叶えられたわ…。」 母は玄関を経て、部屋へ入るなり、そんな感嘆詞を告げていた。 皇室が持っている離宮は国のあちこちに存在し、そのほとんどは無形文化財として国が登録し、皇室が管理している…

大切な存在-ONE-それぞれの愛し方 9

トボトボと帰りついた私が最初に見えたものは、驚がく的な絵図でしかなかった。 あの母のことだ。 そうなることは目に見えていたはずなのに、最近はその行動がめっきり減っていたため、忘れていた。 母はすぐにハグする癖があったことを・・・。 時として父…

大切な存在-ONE-それぞれの愛し方 8

「あいつが俺の目の前に再び姿を現したのはほんの数か月前のことだ。 どこで何をしていたのか、どんな歳月を過ごしてきたのか、それは本当にどうでもいいことで、彼女が自分の前に現れて戻ってきてくれたことが本当にうれしかったんだ。 でも、あいつ何事も…

大切な存在-ONE-それぞれの愛し方 7

少し遅めの昼食が終わり少し経った後、父はいそいそと着替えをし、どこかへ出かけようとしていた。 どこへ行くのだろうとジッと見つめていると、視線に気づいた父が「行くか?」と聞いてきた。 訳も分からずコクンと頷くと、父はチェギョンさんを呼び、何か…

大切な存在-ONE-それぞれの愛し方 6

「ウソン・・・どうしてチェギョンを知っている?」 それはまるで地響きのような声だった。 声の主はこちらを完全に睨んでいた。 久しぶりに見た魔王の君臨だった。 しかし、どうしてと言われても会ったことがあるし、面識が何度かある程度だ。 「ミジュの…

大切な存在-ONE-それぞれの愛し方 5

そこは私たち一家から見るとごくごく普通の別荘だった。 別荘といっても歴史ある列記とした離宮であることは変わりなく、普通は宮直属の管理人が配属され、管理にあたる。 そして私たち皇族がたまに夏などに避暑地として訪れる際などにきちんと整えてくれる…

大切な存在-ONE-それぞれの愛し方 4

それからもずっと私の頭の中は疑問だらけだった。 執務をしていてもふっとよぎる疑問符。 集中できるはずもなく、少々のミスを多発した。 「あっら~、いい男が台無しよ。眉間にしわを寄せちゃって。」 そんな時、母が突然やってきて私の顔を見てケラケラ笑…

大切な存在-ONE-それぞれの愛し方 3

「珍しいですね。私を呼び出すとは。急な用事とは何でしょう。」 あれから数カ月後、やっと時間のとれた義父のシン・チェジュン氏を呼び出した。 父とは昔からどんな関係だったのか。 質問はそれしかなかった。 父と義父が会ったのは両者の会食が初のはず。…

大切な存在-ONE-それぞれの愛し方 2

改めて言わせてもらうが、決して両親の仲は悪かった。 ただ、普通のようでどこか普通ではない、何かがずっと引っ掛かっていた。 父のあの言葉。 「守りたかった女、守れなかった女。そいつだけだ。」 という答え。 では、なぜ父は母と結婚したのか? なぜ母…

大切な存在-ONE-それぞれの愛し方 1

父が私に皇位を譲り渡しすと同時にこの宮を去り、一人とある別荘に行く日、ずっと聞いてみたかった質問をぶつけてみた。 ――あなたにとって最も大切な人、only oneは誰ですか?―― 単純な質問だが、答えを知るのが怖くて聞けなかった。 そんな私に、父はフッ…