大切な存在-ONE-それぞれの愛し方 3
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「珍しいですね。私を呼び出すとは。急な用事とは何でしょう。」
あれから数カ月後、やっと時間のとれた義父のシン・チェジュン氏を呼び出した。
父とは昔からどんな関係だったのか。
質問はそれしかなかった。
父と義父が会ったのは両者の会食が初のはず。
でも、どこか違う雰囲気を醸し出していた。
一体いつ頃からの付き合いなのか。
でも、私も妻のミジュも幼いころに一度たりとも会ったことはない。
彼は「そのことですか・・・」とフフフっと意味深な含み笑いをし、「いつから話しましょうか?」とおどけて見せた。
「いつ聞かれるかとずっと思っていましたが、やっとですか。」
謁見と言ってもテーブルを挟んで対面的に座り、優雅に最高級の茶葉を使った紅茶を二人飲んでいる。
なんとものどかな雰囲気の中だ。
「義兄上、いえ上皇陛下とはかなり昔にとあることで知り合いました。当時私は中学生でしてね。
だから今も思わず義兄上とあの当時からの呼び名で呼んでしまうんでしょうね。」
彼はそのころを思い出したように懐かしそうに私を見つめ、話した。
「では、あなたはご存知でしょうか?父は『守れなかった女、守りたかった女』、つまり最愛の女性がいたようです。彼女は誰なのでしょう?父は今、その人を探しているんだと思うんです。母さえもその彼女に会いたいそうです。ご存じであれば教えてくれませんか?」
私がそう言うと、義父は驚いた顔をした。
しかし、次の瞬間、本当に柔和な笑みを浮かべ、どこか嬉しそうに見えた。
「まだ愛していらっしゃるんですね・・・。」
彼は一言そう呟いた。
とても愛しそうに、大切な思い出の箱を開けるように・・・。
「知ってますよ。義兄上がそうおっしゃってましたか?さあて、ではこれからは私目の出番ですね。
義兄上にはくれぐれも内密にお願いしますよ。何と言っても彼女は頑固ですからね。
義兄上の元に戻ってくるかどうか確約は出来かねますのでね。落胆させてはいけませんので。」
彼はそう言うと、そそくさと一礼すると帰ろうとしていた。
「あ、そうそう。我が娘の婿様にヒントを一つ教えて差し上げましょう。
あなた様は一度彼女に会っていますよ。でもこれはきっと義兄上はご存じないでしょうな。」
そうやって愉快そうに笑い、嵐のようにそそくさと帰って行く彼を黙って見送るしかなかった。
なぜ、みな次々と疑問符を残す?
納得できる答えをみな答えてくれず、次々と新しい疑問が生まれる。
会っている?
いつ?どこで?
ミジュに夜、寝室でそれとなく聞いてみたが、「そんなんでわかるはずがないじゃない」と一喝で終わった。
「パパは学者だから質問とか疑問とか好きなのよね。頭の中がそういうのでできてるから、踊らされたんじゃないの?」
彼女はそう言ったが、何の慰めにもならず。
ただただいつになるかわからない義父上との約束を待つしかなかった。
一体彼女は誰だ?
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