葵香の勝手 宮小説の世界

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大切な存在-ONE-それぞれの愛し方 9

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トボトボと帰りついた私が最初に見えたものは、驚がく的な絵図でしかなかった。
 
あの母のことだ。
 
そうなることは目に見えていたはずなのに、最近はその行動がめっきり減っていたため、忘れていた。
 
母はすぐにハグする癖があったことを・・・。
 
時として父と母は別々に公務に出かける機会があった。
 
ほんの数時間しか離れていないこともある中で、母は父が帰ってくると強烈なハグをして父を迎え入れていた。
 
父はその度に嫌そうな顔をし、ある時には完全に固まっていた。
 
そんな風景を子供心に見ていた記憶を思い出した。
 
そして、目の前にはその風景が広がっていた。
 
しかしながら、母が父を強烈なハグヲしているわけではなく、母がハグしているのはチェギョンさんだったが・・・。
 
父も久しぶりなので完全に固まっていた。
 
そばで一緒に出迎えた妻も久々のその景色に同じように固まっていた。
 
「母上、その辺にして差し上げたらどうですか?チェギョンさんが困っていますよ。
 父上、じっとしていないでどうにかしてください。」
 
その声にやっと我に返った父はチェギョンさんを奪還すべく素早く自分の腕の中にチェギョンさんを引き入れた。
 
「ウソン、ケチ! シンもケチ!もう、ひさっしぶりのチェギョンとの再会だったのに~!!」
 
あの顔で、その姿でまるで乙女のようにいじける母。
 
「ちょっと待て!スンミ、チェギョンと知り合いか?」
 
父はそう母に尋ねてみるが、肝心要菜チェギョンさんは父の顔を見るなり、ブルブルと顔を横に振り、知らないと目線で訴える。
 
その様子を見て、母は少し悲しそうな表情をしたのを私は見逃さなかった。
 
しかし、すぐ顔は笑顔へと戻り、次の言葉へとつないでいった。
 
「チェギョンが忘れてるのは無理ないわ。かれこれうん十年前に会って以来ですもの。
 まあ、その話はここではなんだから、家に入ってじっくり話しましょ!」
 
「お前の家かっ!」
 
父はチェギョンさんを腕に抱えながら、母となかよく(?)やり合っていた。
 
チェギョンさんはというと、必死になって母のことをどうも思いだそうとしているらしい。
 
皇后であるということはさすがに知っているはずだ。
 
それ以上となると甚だ疑問だ。
 
なにせ母の昔は父もほとんど知らないらしい。
 
チェギョンさんと母との接点はいつ、どこで???
 
その簡単な質問は夕食後の爆弾発言へとつながるのであった。
 
その恐ろしさを私はその時はまだ知らずにいた。
 
 
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