葵香の勝手 宮小説の世界

yahooブログ「Today is the another day」からこちらに移行しました。

LOVE PHANTOM episode 77

「イ・シンとイ・ミンスの関係は何だと思いますか、皆さん。」

チェヨンはにこりと満面の笑みを浮かべ、会衆を見まわした。

「あのー…、もしかして親子ではありませんか?年齢から言って当てはまるかと思うのですが。」

ひ弱そうな一人の男性が勇気を振り絞って一番後ろの席からそっと手を挙げて答えた。

この男をチェヨン達はQと名付けていた。

あまり話さす、静かに常日頃いたのでよくわからない人物として認識されていた。

その言葉を聞いて、その他の方々は嘘のDNA結果の生年月日を見つめていた。

でも、その生年月日も実は数カ月ずれていたが…。

Qはこれも嘘だろうと踏み、もしかしたら…という思いがあった。

ヒョンはその答えを聞いて、ウンギョクと顔を見合わせ、お互いに頷いた後、そばに控えていたキム内官
に合図した。

彼はおずおずと別の書類を配って歩いた。

それをみた宗親会のメンバーは一同俄然とする。

自分たちが全く関知していなかった、知らされていなかった事実。

知っていたのはシンのみ。

その書類はイギリスに出されていたシン自身のミンスに対する認知書だった。

イギリスは韓国皇室とも深く交流していた。

そしてシン・チェギョンは時の皇太子、ウイリアム皇太子が滞在した折、もてなしている。

また、義聖君であったユルとも皇太子は面識があった。

シンが表立って動くことができなかった20年前から今の今まで秘密にされていた事実。

その理由はユルとイギリス王室が後ろ盾をしていたからだった。

「それにも記載してある通りイ・ミンスは列記としたイ・シンの娘である。
 それはまさしく皇帝自らが認めていること。これを翻すことはできない。
 それでもと危惧する者たちもいるであろう。
 同じようにDNA鑑定させている。その結果をお見せしよう。」

ヒョンのその言葉が言い終わると同時に扉は開かれ、ユルとインが一礼した後入ってきた。

まさかイギリスにいるはずのユルが出てくることは予測していなかったのだろう。

目が点になっていた。

チェヨンはそれをホクホクと微笑んでいた。

インはその姿を見逃さなかった。


――こいつがシンと繋がりがないないなんてよく言えたものだな…。
  シンそのままじゃないか?相手も気の毒に…         ――


インはこの場にいるおっさん達に同情したくなった。



ユルとインはチェヨンの隣りに用意されていた席に座った。

ユルはすぐさま自分が持参した一つの封筒をチェヨンに差し出した。

インも続いて二つの全く別の封筒を同じように渡した。

チェヨンはそれらを高く掲げ、彼らに封が切られていないことを見せつけた。

そして一つをヒョンに、もう一つをウンギョクに渡した。

三人はそれぞれの顔を見合わせ、一斉に封を切っていった。

ユルから渡されたのはイギリスでの鑑定結果。

ヒョンとチェヨンにはそれぞれ韓国からのと隣国日本の鑑定結果だった。

三人はそれぞれの結果を目の前に差し出した。

小数点以下の数字は少々違うとはいえ、結果は親子だと伝えていた。

それらを一人一人回覧していく。

ある者はこれでもかとじっと見つめ、ある者はちらっと見ただけで次の人に渡していた。


「もし20年前、二人が離婚していなかったならどうなっていたでしょうね。
 彼女はこの宮廷内で内親王として父と母の愛情のもと、すくすくと育っていたことでしょう。
 また父はもっと穏やかに明るくお過ごしになられたことでしょう。
 代替わりしたとはいえ、あなたたちが行ったことは彼女から父親を奪ったのと等しい。
 十分に反省していただきたい。」


チェヨンはきつく彼らを見まわし、これ以上反論するなという目線を送った。