葵香の勝手 宮小説の世界

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LOVE PHANTOM episode 94

その次の春、シンとチェギョンは結婚を公式発表した。

シンはプロポーズ後、驚異的な回復力を見せ、約一ヶ月後、国民の前に姿を現した。

その横には陰ながらチェギョンが付き添いを見せていた。

それを見たある者は「彼女は何者だ?」と疑問を投げかけた。

またある者は「囲っている愛人じゃないか」と推測した。

かと思えばある者は「恋人だろう」と勝手にそれぞれ思っていた。

その姿はやはりマスコミの格好の餌食になっていった。

そしてシンは会見を開くことになった。

シンがチェギョンの名前を発表すると皇室専属の記者たちは驚いた。

また年配の記者たちもそれは同様だった。

新米の記者たちは記憶の片隅を探り出していた。

「彼女との間には20年前に娘が誕生しております。

    その娘も来年には結婚することになっており、今まで皇室と関係なく過ごして参りました。
 私たちは結婚を機にでもありますが、これからも同様に過ごしてもらいたいと思っております。
 それゆえ、娘、ミンスのことについてはこれ以上のことは伏せさせていただきます。
 皆様、どうか私たちの気持ちをくんでいただきますようお願いいたします。」

皇帝自ら深く頭を下げ、なおかつ娘が誕生していたことについてもその場にいた記者たちをさらに驚かせた。

記者たちはその姿にそれだけ守りたかった存在だったのだろうと考えた。

いつから娘の存在を認知していたのか・・・という質問にシンはきちんとまっとうに答えた。

「離縁される直前に知っていましたが、どうしようもないもどかしさを伴っていたことも事実です。
 最愛の妻と最愛の娘をずっと遠い地から見守るしかありませんでした。
 それでも、いつか絶対に取り戻してみせる、これだけが私自身を奮起していた力です。
 そしてやっと取り戻せました。
 しかしながら誤算が生じたのも事実です。
 皆さん、それは何だと思いますか?」

つらそうに見えた皇帝の顔が、にっこりと笑ってなお且つ楽しそうに記者たちに逆質問をする。

された記者たちはそれぞれに答えを見つけ出そうとひねり出した。

「お子さんのことですか?」

ある記者は皇帝の顔をうかがいながら小さい声でそう答えた。

「皆さんの中に結婚して娘さんがいらっしゃる方はどのくらいいるのかわかりませんがね。
 私も所詮その一人だったということです。
 娘にはもう既に最愛の将来伴侶となる男性をそうそう見つけ出して現れました。
 それが私の誤算です。しかしながら、もうそんな年になったのか・・・とも思いました。
 反対は一切していません。チェギョンもやっとだとお互い安堵しております。」

皇帝は一人ニコリと微笑み、とても楽しそうだった。

記者たちはいったい誰が皇帝の義理の息子になるのかと探そうと考えたが、それを瞬時で打ち消した。

それはこの皇帝がどれだけ恐ろしいものかを皆よく知っていたためでもあった。

もしかしたらいつかその時になったらミンス嬢もその伴侶となった男性も私たちの前に姿を現してくれるかもしれない、その時を待とうと考えた。

一度かもしれないが、この皇帝はそれはその時はきっと許してくれるだろうと。

チェギョンのことを誰一人反対する人物はいなかった。

会見終了後に、号外の新聞がすぐに出され、国民は暖かく迎え入れた。

翌日もニュース報道はそれで持ちきりだった。



そして、春、シンは国民の前にチェギョンと一緒に姿を見せ、結婚したことを報告した。

そこに居合わせた人々は歓声をあげ、喜んだ。