葵香の勝手 宮小説の世界

yahooブログ「Today is the another day」からこちらに移行しました。

LOVE PHANTOM episode 74

インはユルを空港まで迎えに来ていた。

到着時間は先日の電話で聞いていた。

ユルがインに電話してきた場所はなんとヒースロー空港からだった。

もうあと数時間後に出発するという。

インは急いで到着時間に迎えに行こうと考え、すぐさま会社と連絡を取り、休暇を取った。

もちろんそれも大切だが、その前にチェヨンに電話し、どうするべきかを問うた。

チェヨンチェヨンで迎賓館の一室を開けるように祖父に連絡を取り、許可を得た。

また、宗親会の連中を集めるようにも頼んでおいた。

これはすぐさま何の疑いもなく自分たちがかき集めた証拠を有利に持っていくためであった。

一応チェギョンとミンスのことを表面上は認めている彼ら。

しかし、いつ何時反旗を翻すかはわからない。

肝心要の皇帝はいまだ目覚める気配はない。

チェヨンをうまく懐に抑え込み、有利に持っていこうと、権力を振りかざそうとする野心家はいるはず。

そんな奴らを根こそぎやっつけてやろう。

そんな思いが皆を一つにしていた。

いつ意識を取り戻すかわからない彼のために…。

取り戻したらば、絶対に愛する人を今度こそ手放させないように…。

彼が最後の最後に幸せになれるように…。

そこまで持っていくのがチェヨン、そして彼の友人、イン、ファン、ギョン、そしてユルの役目。

それを全て全うすればシンは起きるのではないか…そんな予測さえもあった。



――最後を決めるのはお前たちだ…――


そう言われているような気もした。

「でも、最後はシンだよな…。」

インは運転しながらそんな事を思う。

チェギョンが「NO」と言うことはないだろうけど、彼女がよりよく過ごせるように。

そうできるのはシンの役目。

「お手並み拝見だな」

インの言葉に助手席に座っているユルも頷いた。



チェヨンは一人自室の椅子に座っていた。

しかも面白そうに…。

顔はとても陽気だ。

まるで楽しいおもちゃで遊ぼうかと思っているかのように…。


――どうやっておっさんたちを黙らせようか…――


チェヨンの頭にはその言葉が浮かんでいた。

「殿下、皆様が揃いました。お越しください。」

自分付きのカン内官が恭しく知らせてきた。

チェヨンは椅子からすーっと立ち上がるとひとつ背伸びをし、気合を入れた。

これが彼のいつものスタイルだった。

カン内官に微笑み、目的地へと足を運ぶ。

その顔は若き日のイ・シンを彷彿とさせていた。