LOVE PHANTOM episode 9
チェヨンのほか、祖父、祖母、伯母の3人に浮かんだ最悪のシナリオ。
それは皇室を廃止すること。
「バカな・・・」
バカなことだと思う。
けれど、シンはそれだけの力をもうつけていた。
それを行使してもおかしくはない。
「お祖父様、バカなことだと決して思わないで下さい。
世の皇帝たちが寵妃に溺れ、国を衰退させていったか、その歴史を知っているはずです。
もし僕がいなかった場合、父は皇帝となりある程度力をつけたらそれをするはずだったと思います。
僕が父の立場ならそれをすると思いますよ。容赦なく。失うものは何一つないのですから。
僕をイギリスへ行くことを許さなかった場合、父がこのまま目覚めることなくこの世を去った場合、
僕は数年後皇帝の座に就くでしょう。僕しかいないのですから。
その場合、その最悪のシナリオを行使するつもりです。」
チェヨンはもう決めていた。
もしこのままだった場合、そうしようと。
愛するものを奪われてまで守るものなんてない。
愛する者一人を守れないで、どうして国民を守ることが出来るだろうかと。
それをずっとやってきた守ってきた父はどれだけの葛藤を心の中に溜め込んでいたのだろうかと。
「脅すつもりか?」
この人になにを言っても無駄なのかとチェヨンは思った。
よくこの人が皇帝になりえたなと思った。
それはひとえに祖母であるミンの内助の功があるのだろうと思った。
父が頭が切れるのはよく知っている。
ミンもそうだし、伯母のヘミョンも生まれた時からそう思っていた。
「いいえ、脅しではありません。決定事項です。お忘れなく。でも、これは最終手段です。
それをしないために、イギリスへ行くことをご了承ください。お願いします。」
チェヨンは深々と頭を下げた。
「チェヨン、行きなさい。チェギョンを連れて帰って。
もうこれ以上シンを苦しめたくはないの。
それであの子が回復するならそれでいいわ。
後のことは私たちに任せて。
あなたはいってらっしゃい。」
ヘミョンは笑ってそう言った。
「行きなさい。必ず連れて帰ってね。チェギョンを。その間しっかりシンを看てるから。」
ミンも同じように柔和に笑って言った。
「ありがとうございます。」
そしてチェヨンはもう一度ヒョンを見て言った。
「お祖父様、あなたに出来ることは一つです。
シン・チェギョンをもう一度イ・シンの傍に置けるように宗親会、そして国会に承認を得るよう
働きかけてください。そして必ず承認を取ってください。
承認が得られましたら、僕は彼女たちを連れて帰ります。
それだけでいいので、お願いします。
最後に、チェ尚宮。」
チェヨンはチェ尚宮を呼んだ。
「東宮殿の鍵をあなたは持っているはずです。開けてくれませんか?」
「チェヨン、どうしてなの?」
ヘミョンは不思議そうに聞いた。
「僕をなぜ父が作ったのか。その理由は東宮殿にあると思うからです。
お願いします。開けてください。」
チェヨンはチェ尚宮に頭を下げて頼んだ。