葵香の勝手 宮小説の世界

yahooブログ「Today is the another day」からこちらに移行しました。

LOVE PHANTOM episode 30

「え、ちょっと待って。頭パニクってるんだけど…。
 え?チェヨンさんは私の子なの?え…。」

チェギョンは本当に頭の中がこんがらがっていた。

シンが倒れ、意識不明なことはやっと頭の中に入れた。

どうにか理解した。

けれど、またさらに大きな台風が自分を襲うとは…。

「姉ちゃん、義兄さんがどんなやり方をしたのか僕も知らないよ。
 でも、チェヨンが遺伝子学上姉ちゃんの子であることは変わりがないんだよ。
 義兄さんはそれはそれは目に入れても痛くないほどチェヨンを可愛がってた。
 掟を改正させて、ずっとそばに置いていたよ。
 ネットを見ればそれはとてもよくわかるけど、公務もできるだけ一緒にいたからね。
 その姿に国民は微笑ましく見ていたよ。
 それは姉ちゃんとの子だからだよ。
 でなければ、子供なんて作らなかったはずだよ…。」

義兄の気持ちはわかる人間にはわかっていたはずだ。

どれだけ賢帝と称されようが、当時の妻であるハン・ウリにだけは一切容赦はなかった。

チェヨンがいなければ、とっくの昔に皇室を廃止していたはず…。

その思いは絶対にあったとチェジュンはいつも確信していた。

それを防いだのもこの姉だということも。

姉だけを思って暮らしてきた皇帝。

今更ながらすごい人だったとチェジュンは我が兄を尊敬する。

「これ、何かわかる?」

チェジュンは胸のポケットに入れていた一枚の写真をチェギョンに渡した。

チェギョンはその写真を見て目をシロクロさせた。

そして何度もチェジュンを見る。

チェジュンはおとなしく頷いた。

その写真にはシンが幼い、というか赤ん坊のチェヨンを抱いて微笑んでいる写真だった。

それはまさしく、あの時チェギョンがシンに贈った絵―――――


『希望』


の構図そのままだった。

「姉ちゃんが贈った絵、東宮殿に飾ってあるよ。」

それも衝撃的だった。

幸せになることを願って贈った絵。

描きながらお腹に子供がいることは薄々わかっていたあの頃。

もしかしたら・・・帰れるのかもと喜んでいたあの頃。

そうはならず、廃妃になってしまった・・・。

通常なら生まれてすぐに彼の元に引き取られれるはずの子供。

もし引き取られていたら・・・。

こんな風に笑っていて欲しいと願って描きあげた絵。

結局赤ん坊は自分の手元で育ち、彼の元には行かなかったけど・・・。

いつか絵のように子供を、確実に赤ん坊を抱くだろう彼を想像し、幸せになることを願って贈った。

その絵はひっそりと隠され、東宮殿に今も飾られているという。

「俺、聞いたんだ。『何で子供を作ったのか?』て。
 その答えはとてもシンプルだった。
 後日あの絵を見せてくれて、『この絵のように笑いたかった』って。
 だからチェヨンが生まれてとても幸せそうだった。とてもよく笑ってた。」

チェギョンはチェヨンを見た。

チェヨンがいること、存在することはシンがとても幸せだったことを意味していた。

「なんか今日はたくさんいろんなことがありすぎて整理できてないものもあるけど…。
 もうだいぶ暗くなったし。帰ろう。」
 
チェギョンは立ち上がり、砂を払った。

そしてチェギョンはチェヨンに手を差し出した。

掴めということらしい。

チェヨンはオソロオソロその手を握った。

するとどこからそんな力があったのだろう。

強く引っ張られ、腕に抱きとめられていた。

「なんか不思議な気分だわ。こんな大きな息子がいるなんて。なんか不思議…。」

チェギョンはそう言いながらチェヨンの背中を撫で続けていた。

「でもね、生まれてきてありがとう。」

自分の腹を痛めて産んでいないとはいえ、不思議な縁だと思った。

もしかしたら一生知らないで生きていたかもしれないのに。

けれど、チェヨンに言った言葉は本当に心の底から出た言葉だった。




――――ありがとう。

    私がそばにいなかったけど、あなたがいてくれたことがどれだけ心の安らぎだったか。

    ありがとう。

    シン君、言いたいこといっぱいあるけど、チェヨンをありがとう。――――