LOVE PHANTOM episode 32
太陽が昇る。
また新たな一日の始まりだ。
再スタート!!
チェギョンは心の中でガッツポーズを決めていた。
みな黙って微笑みながら太陽が昇っていく様を見ていた。
いい加減なところで切り上げ、お腹が減ったので近くのレストランまで足を運んだ。
そこには新鮮な野菜などで出来たごく一般的な家庭料理が並んでいた。
さすがに朝早くから起き出して外に出ていたので、いい運動となり、食欲も旺盛だった。
楽しい会話も弾む。
最後にデザートが出てきた。
「ねぇチェギョン、ずっと想ってた?」
ユルの問いかけに「誰に、何を?」というものはない。
しかし、周囲のものはそれが誰で何をということはわかっていた。
「迎えに行くから待っていろとも待っているとも言わなかったけど・・・。
待っていたし、ずっと想ってる。それはどこに行こうと永遠に変わらないわ。」
チェギョンは正直にそう答えた。
「ねぇユル君、いつから知ってたの?」
今度はチェギョンが質問をした。
言いたかったことは…“いつから自分達がここにいることを知っていたのか?”だった。
「最初からだよ。シン自らが連絡してきたんだ。
何かあったときに影から支えてやってくれって。
皇室にいたときはいろいろあったけど、最後に頼めるのはお前だけだって言われてね。
本当は俺のいるすぐ近くは嫌だっただろうけど任せられるのは俺だけだってさ。
ホントに…俺を恨んでくれた方が楽なのにな…。あいつはそれを選択しないんだ。」
シンがとても不器用な人間だということは幼い時からわかっていた。
けれど、裏を返せばとてもいい奴だということもわかっていた。
それを利用したのがユル自身。
あの時『離婚を口にしろ』と言わなければ、二人は、ミンスを加えれば三人だが幸せに暮らせていたのではないかという後悔の念が騒ぐ。
けれど、シンから電話があったとき、シンは一切ユルを責めなかった。
「俺ら夫婦が未熟だっただけだ」
シンはそれしか言わなかった。
「皇室とはそんなところだ。お前は自由に生きろ!」
最後にシンはチェギョンと生まれてくる子を頼むと言い残して電話を切った。
だからどんなことがあろうとユルは誓ったのだ。
何かあったとき手を差し伸べ守り抜く…と
シンが自らの手でチェギョン達を護れる…その時まで。
「ただ言葉が昔から足りないんだ。
だからチェギョン、たっぷり帰ったら小言言ってやれ。
そしてたっぷり言いたいこと、胸に収めてることを聞き出してやってくれ。頼むな。」
ユルはほほ笑んだ。
チェギョンもほほ笑んだ。
「うん。言いたいこと言って、胸に20年間抑えてること聞いてやる。
でもきっと今もムッツリだと思うよ。それは変わっていないと思うけどね…。
チェジュン、チェヨン、そこんとこどうなの?」
チェギョンはチェヨンのことをもう呼び捨てにした。
呼び捨てにされたチェヨンは先ほどより傍にいけた気がして、とてもうれしそうにほほ笑んだ。
「ムッツリですか?っというより策士ですよ。父はとっても策士です。チェジュンさんはどうですか?」
「策士であることは昔から変わらないけど…ムッツリかどうかはね。
それは姉ちゃんの時のみ発揮されたみたいだよ。
だから姉ちゃん。帰ってたたき起したらがんばってね。」
チェジュンはまるで他人事のようにニヤリと笑った。
チェギョンはヤダナ~と引き笑いのような苦笑いして頷いた。
そんな姿をインもユルもその他周りのものも微笑ましく見ていた。
ミンスだけは「どんな人なんだろう?」とイメージがなかなか膨らまなかった。
ハテナマークだけが頭の中を点在していた。
「それとユル君、もう一つだけ聞きたかったんだ。
年に三回、誕生日に色の違った薔薇が贈られてくるんだけど…。
それってシン君よね?ユル君が手伝ってるんだよね?」
チェギョンはどうしてもこのことが聞きたかった。
シンはどこからかミンスの誕生日を知っていたのではないか。
それを入手できる人物はイギリスという広大な土地で暮らしているユルしかいなかった。
きっと何かでシンが頼み、ユルが贈ってくるのだろうと考えていた。
それはユルとシンが和解したということを示していた。
決して最初から仲が悪かったわけではない。
もし私が皇太子妃として上がらなければ、どこか宮家のご令嬢と結婚していれば…。
ややこしい関係にならなかったのではないだろうか。
どれだけ過去を悔やんでも仕方がないが。
「そうなんですか?私の誕生日の時はピンクのきれいな薔薇が、母の時は赤い薔薇が。
そしてもうひとつ奇妙なことに毎年6月の17日に青い薔薇が贈られてくるんです。」
ユルはニコッと微笑んで何も言わなかった。
チェギョンはそれを肯定と取った。
<やっぱりね~>
シンらしいと言えばシンらしい。
――――どこにいてもやっぱりあなたは私たちを見守ってくれた――――
それだけで充分嬉しかった。
チェギョンは目の前に出されたアイスクリームをとてもおいしそうに食べた。
「あの~僕の誕生日が6月17日なんですけど…。」
チェヨンの申し訳なさそうな声にチェギョンはまた眼球が飛び出るくらい驚いた。
でも、そのあとすぐにほほ笑んだ。
チェヨンの存在を知らせようとしたのか、それとも幸せだと伝えたかったのか…。
青い薔薇の花ことば、それは『奇跡』『神の祝福』だった。
チェギョンは17年前突然贈られてきたその薔薇の意味を探ろうとし、調べていたのだ。
奇跡――――
チェヨンが生まれたのはまさしく奇跡。
こうやって今対面していることさえも奇跡。
シンのもとにチェヨンが舞い降りたのは神の祝福そのもの。
――――神様、ありがとうございます――――
そう祈りながらも、シンの強運に呆れていた。