葵香の勝手 宮小説の世界

yahooブログ「Today is the another day」からこちらに移行しました。

LOVE PHANTOM episode 36

到着ロビーにはギョンとガンヒョン夫妻が今か今かとチェギョンたちの到着を待っていた。

そしてその瞬間は訪れた。

ガンヒョンは20年間会っていなかったにも関わらず、チェギョンを見つけ、勢いよく抱き付いた。

抱き付かれた方のチェギョンは何が起こったのか一瞬わからなかったが、ガンヒョンだとやはりすぐわかった。

ギョンはその素早さに呆れ、ここで注目を浴びてはいけないので、ギョン家の専用ラウンジに連れていった。

「よ!久しぶりだな。元気そうでなにより。」

ギョンは正反対に明るく挨拶した。

「ギョン君、久しぶりね。ちょっとガンヒョン、顔が見えない。顔みせて。
20年振りに会ったんだからじっくり見たいわ。」

ずっと抱き付いたままのガンヒョンをどうにか説得し、チェギョンはやっとガンヒョンの顔を見ることができた。

「まじまじ見ないでよ。老けてるんだから。」

そう言いながらぐじょぐじょになった泣き顔を笑いに変えた。

「それを言うんだったら私もよ。ガンヒョン、結局ギョン君と結婚したんだね。よかった。」

チェギョンは再度ガンヒョンを抱き締めた。

その後ろにはミンスがいた。

ガンヒョンはミンスをとらえていた。

「チェギョン、よく頑張ったね。よく頑張った。」

チェギョンもその言葉にとうとう目頭に涙を貯めていた。

「陛下にたっぷり褒めてもらわなきゃね。」

チェギョンは何度も何度も頷いた。

「うん。シン君にたっぷり褒めてもらう~。」

ミンスは誰だかわからなかったが、母にとって重要な人物であることはわかった。


チェヨン!で、どうやって行くんだ?」

一通り感動の再会を終えたところで、インのその言葉にチェヨンはわかりやすく説明した。

チェヨンは宮から迎えにやってきた車に翊衛士を一人乗せ、宮に迎う。

チェギョンとミンスはもう一つ宮から迎えの車が来てるのでチェジュンとともにチェヨンの後を追うものだった。

「インさんたちはどうしますか?ギョンさんたちは来ますよね?」

ギョンとガンヒョンは頷き、チェギョンを一人にしないと言う。

「俺たちは明日お邪魔するよ。もう一人のバカ息子を見張らなきゃいけないんでね。」

インとヒョリン、そして娘のマリはその場で別れることにした。

「そうそう、紹介していなかったわ。娘のミンスよ。かわいいでしょう。」

チェギョンは誇らしい顔でミンスを紹介していた。

それは20年間ある意味幸せに彼女たちが暮らしてきたことを物語っていた。

ミンスにはチェギョンが一番仲がいい友人の一人だと紹介していた。

ガンヒョンからすれば、ミンスはチェギョンとシンの娘だと一目でわかる。

どこかやはり似ていた。

けれどそこにはやはりどことなく気品が漂っていた。

皇室の血はどうなろうとも出てくるものなのね…。

そしてもう一人シンの姉であるヘミョンに似ているような気もした。



――――チェギョン、ミンスが傍にいてよかったね
                         あなたが幸せでよかった――――


ちょうどそのとき、迎えに来た車が到着したとの知らせが届いた。

チェギョンはチェヨンの指示のもと、チェジュンと同じ車に便乗した。

ミンスはその恭しい光景に目を見張り、少々戸惑った。

チェギョンは20年前と何一つ変わらないわねと反対にクールに対応した。

『母はどこに行ってもやはり皇太子妃だった人だわ』

ミンスは母のそんな行動を評した。



車は護衛の車ごと宮廷へと向かう。

20年間離れていたことで、やはりその景色は変わっていた。

チェギョンもミンスも何も語ることなく移り行く景色を見ていた。

けれど、チェギョンはミンスの手をずっと握っていた。

ミンスはかすかに震える母の手を感じ取っていた。

父に会う。

母にとって最愛の人に会う。

ネットなどで写真は見ているが、実際はどうかわからない。

どうか私たちが来ることで回復してください。

どうか母に笑顔を・・・。

手を握り締めながら、そう願った。