葵香の勝手 宮小説の世界

yahooブログ「Today is the another day」からこちらに移行しました。

Jealousy2

朝、シャワーを浴び、服を着る。

ただそれだけのこと。

でも、そこにはいつもの姿はない。

もう少しで朝食の時間がやってくる。

どんなことがあろうと、けんかをしていようがしていまいが朝食はいつも皆で集まって食事をする。

それがいつの間にか暗黙の約束になっていた。

それを今まで誰一人と破ったことがない。

今回もやはりそんな状態でも皆集まる。

ただし、一切の夫婦の会話はないし、甘い囁きもない。

チェギョンは子供たちと話しているだけ。

シンには一切振ってこなかったし、シンが話しかけても一切聞いてませんという表情をした。

「無視」だった。

子供たちもいつもの両親の違いに内心戸惑いを思えた。

話すトーンはいつもと同じ。

話しかければきとんと笑って話してくれる。

でも、それでもピリピリムードは全くといってなくなってはくれない。


――これは大変だ!――


リアは大変だと思ったし、ヤバいと思った。

こんな時に頼りになるのは長男のレイだったが、彼は今、イギリスに留学中。

ニュースでもしかしたら知ってるのかもしれない。

リアはこっそり電話してみようと思った。


子供たちの心配は余所にケンカはいまだに続いているシンとチェギョン。

シンはよくもその他の皇族たちが黙っているな…とそんなことを考えた。

もし、これが皇太子時代にあったことならば大問題に発展しているはずだ。

でも、それもない。


――どうしてだ・・・?俺を追い落とすチャンスだろうに・・・――


執務中にも関わらずふとそんなことを思った。

コン内官のあとにシンについたキム内官も何も言わず、黙って静観。

シンは首をひねるばかりだった。

「ちょっと休憩します。」

シンはそう言うと、部屋を出ていった。


廊下をてくてく歩く。

いつも当たり前のように歩いているこの道が今日は何だか長く感じる。

下を向いて歩いていると数メーター先にかわいらしい靴をはいている足が見えた。

それは見覚えのある足だった。

顔をあげるとそこにはチェギョンの姿があった。

シンを見つけるとシンの方へスタスタと歩いてくる。

そしてシンの前で止まった。

でも、目はいまだ怒っている目だった。

「今から公務に出かけるけど、それが終わったら子供たちを連れて実家に帰らせていただくわ。」

それは有無を言わせぬ宣言だった。

チェギョンはそのままシンを通り過ぎ、玄関へ歩き出した。

シンはそんなチェギョンの腕を取った。

チェギョンは自分の腕を掴んでるシンの手を見てフンっと笑った

「どうして?ていう顔をしてるわね。あなたの許可んんかもらってないわ。」

チェギョンがどこかへ行く時、最終的に許可するのはシンだった。

今回の実家へ里帰りするというものはもちろん喧嘩する前も一切聞いていない話だった。

しかも、文章にて提示られ許可のサインをした覚えもない。

「お父様が許可してくださったのよ。最近里帰りしていなかったしね。
 お母さまも久しぶりだし行ってきたらと賛成してくださったのよ。」

シンもある意味チェギョンに甘いが、それ以上に甘いのが彼らである。

シンはもううなだれるしかなかった。

宗親会を止めているのはきっとこの両親。

きっと己の様子を楽しそうに見ているのだろう。

シンはなぜか皆に踊らされている感を拭い去ることができなかった。

「じゃ。そういうことで。」

チェギョンはキィっとシンをにらんで、廊下を歩いていってしまった。

シンはただただその後ろ姿を見送った。





つづく。