Fireworks-夏の風物詩‐2.
シンは一人決済の書類が溜まっているからと言い訳をし、執務室にこもった。
――どうすればいいのか?どうすればチェギョンを花火に連れてってやれる?――
毎年のごとく、翌日の新聞には花火大会に関する記事が紙面を飾る。
どのくらいの人間が来ただの、交通網が麻痺しただの…。
それをただただ眺めていただけだった。
――そこに皇太弟妃をどうすれば・・・?――
まさかこんなことで悩むとも思わなかった数年前の自分。
どれだけの新しい世界を彼女は見せてくれただろう?くれるだろう?
それに自分は答えなければならない。
そんなことを思う。
ふと、思い出したことがあった。
確か・・・。
シンはそのまま携帯から電話番号を探り出し、かけた。
「ファンか?今大丈夫か?」
必要最低限の挨拶。
こちらが話したくても相手はもしかしたら話せない時がある。
『大丈夫だよ。珍しいね、シンからの電話って…。大学で話せないこと?』
本当にくえないヤツとシンは思ってしまう。
今も何を考えてるのかわからない。
「まあな。確かお前、毎年、別荘から1日の花火大会を見るって言ってなかったか?」
ファンの別荘は山の中にあるが、その周りは手つかずのまま自然が残っている。
そしてその場所はソウルが一望できるかなりの立地条件がいい場所でもあった。
『ああ、今年も見る予定にしてるよ。シンも来る?』
その問いにシンはありがたいと思った。
持つべきものは友人。
『今年はうちの両親は海外に行くから俺だけなんでみんなを招待してるんだ。
ギョンもインも来るよ。あまり人に知られていない場所だから警備もしやすいと思うよ。
必要なら必要最低限でいいんじゃないかな?行きたがってるでしょ?シンの奥さん…。』
ギョンもインも来るよ。あまり人に知られていない場所だから警備もしやすいと思うよ。
必要なら必要最低限でいいんじゃないかな?行きたがってるでしょ?シンの奥さん…。』
ムフフっとからかわれてる気もしないでもないが、便乗した方が早い。
「ああ、行きたがってるよ。市街に降りて見ることはできないが、そこなら許可が下りるかもしれない。
ヴィップ待遇で見ようとすればあるかもしれないが、それじゃ見た気分にはならにだろう。
上と相談してみるよ。」
ヴィップ待遇で見ようとすればあるかもしれないが、それじゃ見た気分にはならにだろう。
上と相談してみるよ。」
シンはそう言って電話を切った。
その足で皇帝となった姉であるヘミョンの部屋へ向かった。
「あら、シンが来るなんて珍しいわね…」
相変わらずの厭味だった。
「皇帝陛下にお頼みしたいことがありまして参上しました。」
シンは弟という身分ではなく、皇太弟として謁見した。
「あら、何用かしら?」
フフっと笑ってみせるヘミョンだった。
「夏休みを8月1日と2日の2日間だけいただきたく…。」
「花火大会に行くの?」
話している途中でヘミョンはそうでしょ?という顔をし、話を区切った。
「チェギョンが行きたがっているので、友人の別荘で友人たちと見ようと言うことになりまして…。」
「いいわよ。ただし必要最低限の翊衛士は連れて行きなさいよ。
それと、そこまで言うならばたまっている全てのものを終えてね。」
それと、そこまで言うならばたまっている全てのものを終えてね。」
それはたまっている決済などの書類も、きっとおそらく回ってくるだろうそれ以上の書類もということだろう。
常々、我が姉ながら悪魔だと思う。
蛇に睨まれたカエルだ。
それでも妻の笑顔が観れるならそれでもいいと思う。
甘いと言われようとも。
「ええ、結構です。ありがとうございました。」
シンはそう告げて部屋を去ろうとした。
「キレイよ、シン。カメラで撮れるなら撮ってきてちょうだい。私も見たいけどね…。」
振り返ったシンが見たものはすこし寂しそうなヘミョンの顔だった。
「・・・見たことがあるんですか、姉上?」
ぶしつけな質問だとも思った。
それでも聞いてみたかった。
全く見たことがない自分。
かたや見たことがある姉。
「…一度だけね。学生の頃にお忍びでね…。とってもキレイだったわ。
確かにここでも打ち上げられるけど、それ以上よ。
チェギョンが去年言っていたわ。
『花火をみると夏だな』て思うんですって。『夏の風物詩』ですって。
『夏に花火を見ないと夏じゃない』とも言っていたわ。
あんたは見たことがないでしょ?堪能してきなさい。
そしていつかあなたたちに子供ができたとき、見せてあげればいいわ。
それほどの価値があるものよ。その予行練習よ。」
確かにここでも打ち上げられるけど、それ以上よ。
チェギョンが去年言っていたわ。
『花火をみると夏だな』て思うんですって。『夏の風物詩』ですって。
『夏に花火を見ないと夏じゃない』とも言っていたわ。
あんたは見たことがないでしょ?堪能してきなさい。
そしていつかあなたたちに子供ができたとき、見せてあげればいいわ。
それほどの価値があるものよ。その予行練習よ。」
ヘミョンはそう笑って見せた。
宮の世界には本当に多くの規律が存在している。
しかしながらそれが今の現代にあっているかどうかはまた別の話だった。
それを打ち破れるのはきっとこの皇太弟夫妻だろうとヘミョンは思っている。
自分自身、皇帝という地位につきそれ相応の仕事はしているが、それでも庶民としてずっと育ってきたチェギョンと数年間遊びに暮らした自分とはやはり価値観というのは雲泥の差が生じる。
国民に近づきたければ宮も変わっていかなくてはならない。
もっと近くに…。
そう国民が思ってくれる皇室にならなければまた再度つらい経験をしなければいけない時が来るろう。
そんな日を作らないためにも変えるものはどんどん変えなければいけない。
その突破口はシン・チェギョン。
私たち家族を変えてくれたシン・チェギョン。
彼女にしかできない、弟、シンを変える力。
それを今回もいかんなく発揮してくれるだろうと信じている。
「はい、かしこまりました。その時にはどうか姉上も一緒に…。」
そんな言葉をかけてくる弟の変化をヘミョンはとてもうれしく思った。
ヘミョンはシンの顔を見たまま、微笑んで頷いた。
つづく・・・