Fireworks-夏の風物詩-5.
シンはチェギョンを自分の車の助手席に乗せ、発進した。
もちろんその後ろから少人数の翊衛士を従えて。
市街地はもうこの時間すでに賑わっているだろうから・・・とファンに渡された迂回路を通り抜ける。
チェギョンは通常通るはずのない細い路地などを抜けていくので隣でびっくりしている。
「シン君、いったい本当にどこにいくの?大丈夫なの?」
びっくりしながらも本当にこの道であっているのか心配している。
「大丈夫だ。後ろから護衛が来ているから。この道であってるよ。」
そう言われても・・・と不安そうだったが、その横であくびをファ~っとする。
その姿にシンはチェギョンらしいとにこりと笑う。
「寝たければ寝てていいぞ。ついたら起こしてやるから・・・。」
チェギョンの頭を撫でながらそのように誘う。
「うん。絶対起こしてよ~。おやすみ~・・・。」
そう言った途端、ス――っと眠りに入るチェギョン。
シンは呆れながらも運転を続行した。
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「ん?・・・ここはどこ?・・・私はだあれ?」
庶民によくあるお決まりのセリフを天井に向かって吐く。
チェギョンはふかふかのベッドに寝かされ、頭の中はまだボーっとしていた。
一体ここはどこなのか、まったく記憶がない。
当然といえば当然なのだが・・・。
「しんく~ん、しんく~ん、どこですか~?」
呼んでもシンの影も形も目の前に現れてくれない。
「『起こしてね』て言ったのに・・・。愛しい妻をほったらかしてどこにいってるのよー!!」
悪態をついてみるが、それさえも当の本人には届かない。
チェギョンは半分寝ぼけたままベッドから降りてスタスタと部屋の扉があるであろう場所へと向かった。
扉を少し開け、右へ左へ少し頭を出し、まるで泥棒のように周りを見回す。
「誰一人いない。一体ここはどこ?」
完全に廊下であろう場所に出て、右へと歩き出す。
左でもよかったのだが、右へと行ってみたかった。
カンだった。
しばらく歩くとどこからともなく声が聞こえる。
よーく聞き耳を立ててみるとその声はよく聞いたことのある声だった。
「ガンヒョン???」
何度も首をひねってみるがその声に間違いないと確信できる。
「一体ここはどこなんだ?」
再度首をひねりながらも声がした方へ方へ進んでいく。
そしてそこにまた扉が目の前に現れた。
チェギョンはゴクンと唾を飲み込み、扉を勢いよく開けた。
そこにはいつものメンバーが揃っていた。
シン、イン、ファン、ギョン、ガンヒョン、ヒスン、スニョンの7人。
チェギョンは全員を見渡し、目を丸くする。
「チェギョン、起きたのね~。」
チェギョンに気がついたガンヒョンが声をかける。
「よく寝てたな~」
とついでのようにガンヒョンの傍にいたギョンがそう声をかける。
「シン君、いったいここはどこなの???」
チェギョンはどうして今日という日にいつものメンバー全員が揃っているのか、不思議だった。
「ガンヒョン、ヒスン、スニョン。確かあなたたち今日の花火を見に行くって言ってなかった?」
確かに数日前にそう聞いた記憶がある。
――なのに、どうしてここにいる?――
夢かと思って自分の頬をつねってみるが、痛い。
「チェギョン、ここはファンの家のの別荘だよ。ここは花火を見るのにサイコーの場所らしい。
そういう俺もまだ見たことがないがな・・・。見たかっただろう?ここなら気兼ねなく見れるだろ?」
そういう俺もまだ見たことがないがな・・・。見たかっただろう?ここなら気兼ねなく見れるだろ?」
シンはまだ現状把握ができていないチェギョンにそう説明する。
その説明にチェギョンはやっとのこと自分のすぐ傍までやってきたシンを見上げる。
シンの優しそうに自分を見下ろすまなざしに、自然と涙が伝い落ちる。
ずっと見れないと思っていた。
どれだけ思っても願っても叶わない夢だと諦めていた。
でも、彼はきちんと自分を見てくれていた。
それがとてもうれしかった。
「おいおい、泣くなよ。お前に泣かれるとどうすればいいのかわからなくなる・・・。」
シンはそう言いながらもチェギョンを腕の中に抱きしめていた。
そしてそっと涙を拭った。
「シン君・・・」
「ん?」
「とってもうれしい。ありがとう・・・。」
チェギョンはどうにか涙を堪え、にっこりと微笑んだ。
つづく