葵香の勝手 宮小説の世界

yahooブログ「Today is the another day」からこちらに移行しました。

LOVE PHANTOM episode 65

「あ、でもフランクフルトで少し時間があるからその間に電話するって。」

チェヨンはそれを聞きながらパソコンを立ち上げ、空港の時刻表を調べた。

すると、確かにあったのだ。

これに間違いないとチェヨンは確信した。

「どうすればいい?ここに連れてきてもいいの?」

チェヨンは頭を抱える。

どうすればいいのか?

いつかは素性はばれる。

いや、彼ならばもしかしたら知っているのかもしれない。。

「姉上、電話があったら僕か母に変わるようにしてください。
 空港側にはこちらから指示しておきます。そして…イジュンを行かせます。」
チェヨンはカン内官に指示する。

彼をそっと連れてくるようにと。

仁川空港には皇室専用の搭乗口がある。

そちらに誘導してもらい、そこから車でこちらに来てもらう。

「そして…彼を何処に泊めるかですが、迎賓館を開けさせます。
 そちらに泊めてください。姉上もいっしょに移動してもらいます。
 母上、さすがに隣の部屋でいちゃつかれたくはないでしょう?」

その問いにチェギョンはウンウンとうなずく。

「もちろんイヤよ。私だってシン君とまだいちゃついてないのに。
娘に先を越されるのはムカツクわ・・・。」

とムスッと膨れながら憤慨する。

その顔にチェヨンはうなだれるしかなかった。


――娘と競争してどうする?――


そんなことは口が裂けても言えなかった。


韓国時間で18時30分頃、エリックから電話が入った。

「もしもし、エリック?お久しぶりね…。」

ミンスはエリックの電話番号が表示されるとすぐさま出ずに母に渡した。

『お久しぶりです。リアさん、いいえ、チェギョンさんとお呼びした方がいいですかね?』

その言葉にチェギョンは自分の正体を知っていることを確信した。

チェヨンからはもしかしたら知っているのかもしれないと聞いていたからだった。


――でも、どうして知っているの?――


その問いは彼が来てから答えてもらおうと思った。

「私が何者かあなたは知っているのね?では話が早いわ。
 仁川に着いたら、私の弟でイジュンという男性があなたに近づくわ。
 ヒースローであなたと別れた時に私のすぐ近くにいた人間よ。
 彼に大人しく従って。そしたらミンスに会えるわ。でも、このことは一切他言無用よ。わかった?」

チェギョンは手短に話をし、エリックは了承した。

了承したことが分かるとチェギョンはそのままミンスに携帯を渡す。

ミンスは意気揚々とエリックと話し出す。

恋人たちの会話は次から次へと弾んでいく。

だが、時間は無情にもすぐに経ってしまう。

「もう時間だ」と告げられたようで、ミンスは「愛してるわ」と告げ、電話を切った。

「仲がいいわね~」と娘を冷やかしながらチェギョンはチェヨンに電話をかけ、詳細を話した。


昼間はずっと母と娘で服や最低限の荷物を箱に詰める作業を行っていた。

それを女官たちはせっせと迎賓館に運ぶ。

「あ、これ懐かしい~!」

チェギョンはかつての自分の部屋のものをあれこれ見ながら声を上げる。

そんな様子をチェ尚宮は一緒に作業しながら時に涙ぐみながらほほえましく見ていた。


――どうか陛下、早くお目覚めください。――


そう願いながら・・・。