手紙。
幼いときからずっと母一人子一人だった。
「どうして僕にはパパがいないの?」
いつか幼心に聞いた言葉。
母はそんな時とても悲しそうな目をしていた。
自分の目の高さまでしゃがみこみ、抱きしめて「ごめんね・・・。」
一言そうつぶやいた。
「あなたのパパと離れ離れにさせてごめんね・・・。」
母はそう言いながら泣いていた。
幼心にもう聞くことはやめようと考えた。
それゆえ、一切自分の父親のことを聞くことはなかった。
ピンポンと玄関のブザーが鳴った。
「はい。」と何も疑いもなく、玄関の扉を開けた。
そこには自分よりも20歳上くらいの紳士が一人立っていた。
圧倒的なオーラ。
毅然とした態度。
彼にはとても華やかな存在感があった。
「・・・どちらさまでしょうか?」
彼は僕の顔を見て驚いている様子だった。
「・・・君はチェギョンの息子さん・・・・・・・?」
彼が搾り出した言葉はそれだった。
「そうですけど・・・。どちらさまですか?」
「昔の知り合いだよ。部屋に入ってもいいかな?手を合わせたいんだ…」
彼は微笑み、それ以上言わなかった。
僕はどうぞと彼を部屋の中に入れた。
入れなければいけない理由があった。
母の死をいつから知っていたのだろう。
昨日、母のお墓に行くと、母が生前好きだった花がきれいに生けてあった。
そして墓の周辺もきれいに整えられていた。
こんな人はいない。
誰が来たのだろうと思っていた。
きっとこの人だ。
それしか考えられない。
そして…。
彼は母の写真に手を合わせた。
かなり長く…。
僕はその光景を黙って見守った。
そして、箪笥の引出しから一つの手紙を取り出し、彼に無言で渡した。
「…これは?」
彼は暫くその手紙をじっと見つめた後、一言疑問を呈した。
「母が亡くなる数日前、『いつかあなたのお父様が訪ねてきたら渡してくれ』と言われました。
どうぞ。母からあなた宛ての手紙です。ちなみに僕は中身を全く知りません。」
僕はそれだけを言うと別の部屋へ移動した。
彼を一人にさせたかった。
もしかしたら彼のそんな姿を、泣く姿を見たくなかったのかもしれない。
母は彼の姿をテレビで見ていた。
そしていつも「かっこいいわね~」とミーハー発言をしていた。
キャーとかワーとか言うくせに、新聞に載ったら切り取ってノートに張り付けるくせに。
なのに彼がこの町の隣の市に来た時、梃子でも行かなかった。
「こんなおばさんが行ったって見向きもされないわよ。 テレビや雑誌で十分よ。」
そう言って笑っていた。
それ以上言えなかった。
そしていつのころからか、彼が父親ではないか・・・と疑いだした。
根拠は…彼の昔の幼いころの写真が自分の幼いころの写真と全く瓜二つだったからだ。
来ている服は違いがあるとはいえ、顔かたちはそっくりだった。
母はよく言っていたものだ。
「あなたはお父さんによく似てるわね。」
見たこともない父親と一緒だということはとても幼心に嬉しかったものだ。
泣きむせぶ声が聞こえた。
母の名前を呼びながら泣く彼。
その声がだんだん小さくなり、聞こえなくなった。
「どうして僕にはパパがいないの?」
いつか幼心に聞いた言葉。
母はそんな時とても悲しそうな目をしていた。
自分の目の高さまでしゃがみこみ、抱きしめて「ごめんね・・・。」
一言そうつぶやいた。
「あなたのパパと離れ離れにさせてごめんね・・・。」
母はそう言いながら泣いていた。
幼心にもう聞くことはやめようと考えた。
それゆえ、一切自分の父親のことを聞くことはなかった。
ピンポンと玄関のブザーが鳴った。
「はい。」と何も疑いもなく、玄関の扉を開けた。
そこには自分よりも20歳上くらいの紳士が一人立っていた。
圧倒的なオーラ。
毅然とした態度。
彼にはとても華やかな存在感があった。
「・・・どちらさまでしょうか?」
彼は僕の顔を見て驚いている様子だった。
「・・・君はチェギョンの息子さん・・・・・・・?」
彼が搾り出した言葉はそれだった。
「そうですけど・・・。どちらさまですか?」
「昔の知り合いだよ。部屋に入ってもいいかな?手を合わせたいんだ…」
彼は微笑み、それ以上言わなかった。
僕はどうぞと彼を部屋の中に入れた。
入れなければいけない理由があった。
母の死をいつから知っていたのだろう。
昨日、母のお墓に行くと、母が生前好きだった花がきれいに生けてあった。
そして墓の周辺もきれいに整えられていた。
こんな人はいない。
誰が来たのだろうと思っていた。
きっとこの人だ。
それしか考えられない。
そして…。
彼は母の写真に手を合わせた。
かなり長く…。
僕はその光景を黙って見守った。
そして、箪笥の引出しから一つの手紙を取り出し、彼に無言で渡した。
「…これは?」
彼は暫くその手紙をじっと見つめた後、一言疑問を呈した。
「母が亡くなる数日前、『いつかあなたのお父様が訪ねてきたら渡してくれ』と言われました。
どうぞ。母からあなた宛ての手紙です。ちなみに僕は中身を全く知りません。」
僕はそれだけを言うと別の部屋へ移動した。
彼を一人にさせたかった。
もしかしたら彼のそんな姿を、泣く姿を見たくなかったのかもしれない。
母は彼の姿をテレビで見ていた。
そしていつも「かっこいいわね~」とミーハー発言をしていた。
キャーとかワーとか言うくせに、新聞に載ったら切り取ってノートに張り付けるくせに。
なのに彼がこの町の隣の市に来た時、梃子でも行かなかった。
「こんなおばさんが行ったって見向きもされないわよ。 テレビや雑誌で十分よ。」
そう言って笑っていた。
それ以上言えなかった。
そしていつのころからか、彼が父親ではないか・・・と疑いだした。
根拠は…彼の昔の幼いころの写真が自分の幼いころの写真と全く瓜二つだったからだ。
来ている服は違いがあるとはいえ、顔かたちはそっくりだった。
母はよく言っていたものだ。
「あなたはお父さんによく似てるわね。」
見たこともない父親と一緒だということはとても幼心に嬉しかったものだ。
泣きむせぶ声が聞こえた。
母の名前を呼びながら泣く彼。
その声がだんだん小さくなり、聞こえなくなった。