姉に遊ばれる弟の巻。
ある日の夕方、シンは書類を書き上げ、ゆっくりと椅子の背もたれにもたれかかっていた。
どこからかどたばたと走ってくる音が聞こえる。
チェギョンか・・・。
のんびりとそう思い、顔はニンマリとしている。
ほんの1時間前までチェ尚宮よりの教育を受け、そのあとすぐに皇帝であるヘミョンに呼び出され、そそくさと行ってしまった。
シンだけは呼び出されず、のんきに妻を送り出した後残りの書類を書き上げていたのだった。
軽快な彼女の足音。
何かすごく楽しいことがあったのかと思うが、顔はそんな顔をさせずにいる。
妻を喜ばすのはまだ早いと思っているからであるが。
「シン君~。ちょっと聞いて~。」
チェギョンはシンをすぐ見つけると話をしだす。
「お姉さまからいいもの貰っちゃった。公務なんだけどね~。」
チェギョンはとても嬉しそうに話をする。
一体姉上はどんな公務を授けたんだ?
シンは少し怪訝に思うのだが、妻がこんなに浮かれてるのも珍しく、きっと楽しい公務なのだろうなと思った。
けれどそれは次の一言で地獄に落とされることになる。
「日本のアイドルグループがコンサートに来るんだけど、そのチケットをいただいたのー。
シン君がもし嫌ならお姉さまと私で行こうねと言われたー!!」
語尾にハートマークがつきそうだが、シンにとっては嫉妬の炎をメラメラと沸き立たせるものだった。
「アイドルグループだと?」
シンは少し低めの声で言ったのだが、チェギョンはもう行く気満々なのかそんな声に気がつかない。
「日本でもチケットが手に入りにくいんだって~。
韓国でも数分で売り切れたっていうレアものチケットー。
シン君一緒に行こうよ!!」
彼女の周りに花が舞っているのが見える。
「・・・イヤだ。お前行くな。絶対に行くな。」
シンは怒号のごとくそう言い放った。
「なんで?」
チェギョンはなぜシンが怒っているのかまったくわからない。
「なんでわざわざ俺とおまえがアイドルグループなんか見なくちゃいけない?
お前がそんなんだということは男なんだろう?そのアイドルさん?えぇ?」
シンはもうどんどん声を荒げ、怒り出した。
チェギョンもその態度にプッツン切れたのか、こちらも怒り出した。
喧嘩のゴングが切って落とされたのだった。
「・・・男だけど、それがどうしたの?これは公務よ。公務!
シン君が行かないんだったらお姉さまと行くからね。
シン君がどれだけ反対しようが行くわよ。」
シンはもう呆れていた。
このために姉は自分を呼ばずにチェギョンだけ呼んだのだ。
どれだけ反対しようが姉の思うとおりに運んでいく。
「シンスン姉妹も行きたいって言ってたチケットよ。
本当にシン君見なくていいの?」
チェギョンの中ではもう自分は行くことは決定している。
後はシンかヘミョンか。
「は?アイドルだぞ?なんで見なくちゃいけない?」
シンは本当にそう思った。
自分がチェギョンと同じ同性なら楽しいのかも知れないが、男が男を見てなにが楽しいのだ。
そう思っていた。
「ふ~ん。へぇ~。このグループね、すごく演出がいろいろと凝ってるんだって。
映画科を出たシン君ならその技法とか演出方法とか興味があるんじゃないかなと思ったんだけど。
だからお姉さまも夫婦で出席したらと言ってくれたのにー。
行かないならお姉さまとキャアキャア騒いでくるわ!!」
チェギョンはそう言うと、もと来た道を戻ろうとした。
「ちょっと待て!!」
シンは無意識に止めてしまった。
演出方法と言われれば黙っているわけにはいかない。
「・・・行く。そう姉上に伝えとけ。」
チェギョンはその言葉にニンマリと微笑み、るんるんで再度皇帝がいるところまで歩いていった。
『最近、姉に遊ばれている気がする・・・』
シンはチェギョンの後姿を見ながら、そうため息をついた。
もちろん、演出方法がどうのこうのというのは姉であるヘミョンの入知恵。
男性アイドルグループを見に行くなんて、シンの焼餅を増発することは目に見えていた。
そこで別の角度から攻め落とすのが必須。
ただただ見に行くだけではつまらない。
シン自身も刺激になるようなものを持たなければ、3時間もの長丁場を持つわけもなかった。
ヘミョンはすべて見越していたのである。
「お姉さま~、シン君と一緒に行きます!!」
チェギョンは高らかに宣言した。
ヘミョンはちょっぴり悔しかったし、悲しかったが。
『私も見てみたかった~』
と心の中で思ったのは言うまでもない。
終わり。
どこからかどたばたと走ってくる音が聞こえる。
チェギョンか・・・。
のんびりとそう思い、顔はニンマリとしている。
ほんの1時間前までチェ尚宮よりの教育を受け、そのあとすぐに皇帝であるヘミョンに呼び出され、そそくさと行ってしまった。
シンだけは呼び出されず、のんきに妻を送り出した後残りの書類を書き上げていたのだった。
軽快な彼女の足音。
何かすごく楽しいことがあったのかと思うが、顔はそんな顔をさせずにいる。
妻を喜ばすのはまだ早いと思っているからであるが。
「シン君~。ちょっと聞いて~。」
チェギョンはシンをすぐ見つけると話をしだす。
「お姉さまからいいもの貰っちゃった。公務なんだけどね~。」
チェギョンはとても嬉しそうに話をする。
一体姉上はどんな公務を授けたんだ?
シンは少し怪訝に思うのだが、妻がこんなに浮かれてるのも珍しく、きっと楽しい公務なのだろうなと思った。
けれどそれは次の一言で地獄に落とされることになる。
「日本のアイドルグループがコンサートに来るんだけど、そのチケットをいただいたのー。
シン君がもし嫌ならお姉さまと私で行こうねと言われたー!!」
語尾にハートマークがつきそうだが、シンにとっては嫉妬の炎をメラメラと沸き立たせるものだった。
「アイドルグループだと?」
シンは少し低めの声で言ったのだが、チェギョンはもう行く気満々なのかそんな声に気がつかない。
「日本でもチケットが手に入りにくいんだって~。
韓国でも数分で売り切れたっていうレアものチケットー。
シン君一緒に行こうよ!!」
彼女の周りに花が舞っているのが見える。
「・・・イヤだ。お前行くな。絶対に行くな。」
シンは怒号のごとくそう言い放った。
「なんで?」
チェギョンはなぜシンが怒っているのかまったくわからない。
「なんでわざわざ俺とおまえがアイドルグループなんか見なくちゃいけない?
お前がそんなんだということは男なんだろう?そのアイドルさん?えぇ?」
シンはもうどんどん声を荒げ、怒り出した。
チェギョンもその態度にプッツン切れたのか、こちらも怒り出した。
喧嘩のゴングが切って落とされたのだった。
「・・・男だけど、それがどうしたの?これは公務よ。公務!
シン君が行かないんだったらお姉さまと行くからね。
シン君がどれだけ反対しようが行くわよ。」
シンはもう呆れていた。
このために姉は自分を呼ばずにチェギョンだけ呼んだのだ。
どれだけ反対しようが姉の思うとおりに運んでいく。
「シンスン姉妹も行きたいって言ってたチケットよ。
本当にシン君見なくていいの?」
チェギョンの中ではもう自分は行くことは決定している。
後はシンかヘミョンか。
「は?アイドルだぞ?なんで見なくちゃいけない?」
シンは本当にそう思った。
自分がチェギョンと同じ同性なら楽しいのかも知れないが、男が男を見てなにが楽しいのだ。
そう思っていた。
「ふ~ん。へぇ~。このグループね、すごく演出がいろいろと凝ってるんだって。
映画科を出たシン君ならその技法とか演出方法とか興味があるんじゃないかなと思ったんだけど。
だからお姉さまも夫婦で出席したらと言ってくれたのにー。
行かないならお姉さまとキャアキャア騒いでくるわ!!」
チェギョンはそう言うと、もと来た道を戻ろうとした。
「ちょっと待て!!」
シンは無意識に止めてしまった。
演出方法と言われれば黙っているわけにはいかない。
「・・・行く。そう姉上に伝えとけ。」
チェギョンはその言葉にニンマリと微笑み、るんるんで再度皇帝がいるところまで歩いていった。
『最近、姉に遊ばれている気がする・・・』
シンはチェギョンの後姿を見ながら、そうため息をついた。
もちろん、演出方法がどうのこうのというのは姉であるヘミョンの入知恵。
男性アイドルグループを見に行くなんて、シンの焼餅を増発することは目に見えていた。
そこで別の角度から攻め落とすのが必須。
ただただ見に行くだけではつまらない。
シン自身も刺激になるようなものを持たなければ、3時間もの長丁場を持つわけもなかった。
ヘミョンはすべて見越していたのである。
「お姉さま~、シン君と一緒に行きます!!」
チェギョンは高らかに宣言した。
ヘミョンはちょっぴり悔しかったし、悲しかったが。
『私も見てみたかった~』
と心の中で思ったのは言うまでもない。
終わり。