LOVE PHANTOM episode 10

チェ尚宮はチェヨンの迫力とその洗礼された気品に負け、鍵を取り出し、チェヨンへ渡した。

「ありがとうございます。皆さんご一緒しませんか？
　父の秘密が何なのか知りたくないですか？
　恐らく見ておいた方がいいと僕は思いますがね。」

チェヨンは孫特有のスマイルでそう言った。

一緒に見た方がいいと思ったのは事実だが、彼にはもう一つ訳があった。

後々シンにバレた時に共犯者はたくさんいた方があまり怒られないだろうと踏んだからである。

皆揃いに揃ってぞろぞろと東宮殿まで歩く。

けれど、誰一人話す人間はいない。

そうこうしないうちに東宮殿の入口まで来てしまっていた。

そこには既に誰かが待っていた。

「あら、あなた達どうしたの？」

ヘミョンは皇室スマイルで彼らに話しかけた。

まるでおどろいてないようだった。

なぜなら彼らがシンの秘密の一つや二つ持っていてもおかしくなかったからである。

「俺たち全員チェヨンに呼び出されました。」

と代表者のごとくインがご丁寧に答えた。

集まった人物。

それはシンの友人であるイン、ファン、ギョン。

そしてチェギョンの友人ガンヒョン、スニョン、ヒスンだった。

「あんた達何か知ってるの？シンの秘密。」

ヘミョンはにこっと笑ってまた聞いた。

顔は確かに笑ってるが目は何かあるんだったら言いなさいとまるで脅迫するような目線だった。

シンの前の皇帝だったということもあるし、シンの姉ということもあり、６人が６人ともその目線にびくついたというのは言うまでもない。

呼び出しっペのチェヨンはその光景をニンマリと見ていた。

もちろん彼らも共犯者にするつもりで呼び出したのだ。

それともう一つ別の意図があるのだが…。


「伯母上、それを知るために来たんですよ。」


チェヨンは助け船を出すようにヘミョンに言った。

ヘミョンはこう見えてもチェヨンに甘い。

最初で最後の甥っ子なのとやはりシンにそっくりだったからである。

彼らと皇族たちはチェヨンが開けた扉から入っていった。

「何も変わらないわね。時が止まったみたい。
　今にもチェギョンが飛び出して来そうだわ。『お姉さん』って。」

ヘミョンはうっすらと涙を浮かべていた。

ほんの数ヶ月間だったが、楽しかった日々。

弟たち夫婦は心を通わせ、お互いを愛していた。

氷の王子と呼ばれていた弟が毎日のように微笑んでいた。

弟はどんな思いでこの場所を封印し、誰の目にも触れないようにしていたのだろうかと。

奪われた者が去っていってから、その笑顔はこの場所と同じように封印されてしまった。

ヘミョン自身ももう一度その笑顔を取り戻したいと思った。

もう一度シンに笑顔を。

ただそれだけを願って。