LOVE PHANTOM episode 11
「チェヨン。お前知ってるんだろう?自分の出生の秘密を。」
唐突に後ろから声がかかった。
その声の主はギョンだった。
「ええ。」
チェヨンはまっすぐにギョンを見て言った。
ギョンはその声をきくと「そうか」とただそれだけ呟いた。
「だったらそっちの部屋の扉を開けたらいい。」
ギョンの横にいたインがそう指示した。
チェヨンは言われたとおり指差す方向の扉を開けた。
置かれているすべての物に白い布が覆いかぶさっていた。
けれど、ベッドだけは何もかぶさってはなかった。
父が夜な夜などこかに出かけていくことは知っていた。
きっとおそらくこの場所に来たんだろうことは予測していたが、ここだったのかという安堵感がチェヨンを支配した。
ふと自分の後頭部のあたりに刺さる視線を感じた。
チェヨンは振り向くと、その先には壁にかかっていた一枚の絵があった。
「僕?」
チェヨンはほとんど誰にも聞こえないような声を出した。
その絵には間違いなく自分らしき人が描かれていた。
「それはシンだよ。」
いつの間にか横にいたインが言った。
インたち6人はその絵を懐かしそうに見つめていた。
今ではギョンの妻となっているガンヒョンはその絵を見て涙を流していた。
それにつられるようにスニョンとヒスンも涙を流していた。
普通の絵。ごくごく普通の絵。
しかし、その絵の人物イ・シンが抱いているのは生まれたばかりのような赤ん坊。
自分なのかと思うが、どうも違っていたらしい。
「それ……チェギョンの高校の時の卒業制作の絵なの。」
涙を流しながら嗚咽を堪えながらガンヒョンはそう言った。
チェヨンは父は本当にもう一人の娘の存在を知っていたのだと確信した。
「どうしてそんな絵がここにあるの?私たちも卒業式に出席したけど、そんな絵見たことないわ。」
ヘミョンの言葉にミンもヒョンも同じようにそう思った。
「この絵は私の家に直接送られてきました。
『シン君にこっそり見せて』とチェギョンの字で書かれていました。
私たちはその願いを叶えました。
おそらくチェギョンのご両親もご存じないものです。
展覧会にはチェギョンが東宮殿から見える景色を描いたものがあったで、陛下はそれを提出しました。
その絵を知っているのは私たち6人と陛下だけです。」
ガンヒョンはそう告げた。
「チェヨン。シンにとって君は希望だったんだ。君は復讐の道具の為に生まれてきたんじゃないんだよ。
シンが望んで君が生まれたんだ。目に入れてもいいほどにね。」
この父の親友たちは父が何を思っていたのかを知っていたのだ。
自分の出生の秘密さえも知っている。
おそらくシン・チェギョンがどこにいるのかも知っているのだろう。
それでも彼らはその秘密を守り続けた。
「その絵のタイトル、『希望』なんだ。」
ギョンは泣いている妻をそっと抱えながらそう言った。
イ・シンが赤ん坊を抱いてとても柔らかな笑みを浮かべている。
希望……。
父はこの絵を見て、そのタイトルの意味をどう受け取ったのだろうか?