ぬくもり。
「キレイな満月…」
眠れそうにもないこんな夜は窓から外の景色を眺めるに限る・
深夜1時半。
全く眠気は襲ってこない。
アルフレッドを窓辺に置き、肘をつきながら眺める風景。
哀愁が自分の中を支配する。
こんな夜はどうしてもあの夜を思い出してしまう。
彼と過ごした母国での最後の夜を……。
パビリオンの外のベンチで過ごした後、お互い自分の部屋に戻って行った。
お互いに言い訳をたくさん持って。
そうしないと言ってしまいそうになる。
行かないで―― 行かせないで―― 止めて――
すべての言葉を押し込んで部屋に戻って行ったはずだった。
目をつぶりベッドに横になる。
どのくらいそうしていただろう。
ふとベッドに自分と違う重みが加わった。
それが誰なのか、見なくてもわかった。
彼しかいなかった。
後ろから抱き締められる。
黙って身を委ねる。
――――何度この人の腕の中で眠ったのだろう――――
――――何度この人を抱きしめて眠ったのだろう――――
涙が自然と溢れ出す。
ただこのぬくもりがうれしいと思う。
それに気がついたのか、彼が胸の中に抱きいれてくれた。
彼の上着に涙の染みを作る。
黙って背中を優しく撫でてくれる。
顔を見上げ彼を見る。
目と目が合う。
笑っておでこに唇が落ちる。
「眠れ。明日は早いから。」
その優しい響きに安心し、眠りに落ちて行った。
そんな日がもう一つある。
「離婚」と言う言葉を公式会見で発言し、彼からの「心から愛しています」と告げた言葉を無下してから始まった日々。
顔を合わせれば喧嘩をし、それでもいなくなれば気にかかり…。
もっと早く素直に気持ちを伝えていれば変わっていたのだろうかと今なら思うのに。
喧嘩していた日でさえ、その夜と同じように抱きしめられて眠った気がすることがある。
泣いて泣き疲れて眠る毎日。
どれだけ懺悔を口にしてもどれだけ泣いても元に戻れない日。
そんなある夜に、彼は黙って私を抱きしめ眠った。
翌朝、彼は自分の隣に跡形もなくいなくなっていたが、確かにぬくもりを感じた。
彼しかいない。確かに彼だと確信した。
―――お前は一生ここで俺と暮らすんだ。それが俺を傷つけた代価だ―――
そう言われたのに、うれしいと思う。愛されているのだと思う。
その優しさを、彼が不器用なことは知っていたのに、その腕を手放そうとしていた私。
廃妃にはされず、今、別々に暮らす毎日。
いつまた一緒に暮らせるのかは未知数。
こんな夜はあなたのぬくもりを感じて眠りたいと思う。
あの時のように……。
朝、いつの間にかベッドにもぐりこんで寝ていたらしい。
けれど、誰かに抱きしめられて眠ったような気がする。
彼なわけはない。
もちろんチェ尚宮お姉さんでもない。
でも、確かに感じた。
「アルフッド、あなたなの?」
そう聞いても彼は答えてくれない。
―――母国にいる夫が魂だけでも飛ばして抱きしめてくれたのだろうか―――
フッと笑みがこぼれる。
そうだったらとてもうれしい。
窓から日差しが入ってきている。
今日もいい天気だ。
「お姉さん、今日はなあに?」
飛び起きると、扉を開け、元気に飛び出した。
今日はとてもいいことが起こりそうな予感がする。
そんな今日一日。
その予感は的中する。
図書館から出てきて、自転車に乗ろうとすると誰かの視線を感じた。
その視線をたどると、そこにいたのは最愛の人だった。
「シン君だ―!!」
私は大きな声を出し、手をこれでもかというほど振り上げた。
終わり。
眠れそうにもないこんな夜は窓から外の景色を眺めるに限る・
深夜1時半。
全く眠気は襲ってこない。
アルフレッドを窓辺に置き、肘をつきながら眺める風景。
哀愁が自分の中を支配する。
こんな夜はどうしてもあの夜を思い出してしまう。
彼と過ごした母国での最後の夜を……。
パビリオンの外のベンチで過ごした後、お互い自分の部屋に戻って行った。
お互いに言い訳をたくさん持って。
そうしないと言ってしまいそうになる。
行かないで―― 行かせないで―― 止めて――
すべての言葉を押し込んで部屋に戻って行ったはずだった。
目をつぶりベッドに横になる。
どのくらいそうしていただろう。
ふとベッドに自分と違う重みが加わった。
それが誰なのか、見なくてもわかった。
彼しかいなかった。
後ろから抱き締められる。
黙って身を委ねる。
――――何度この人の腕の中で眠ったのだろう――――
――――何度この人を抱きしめて眠ったのだろう――――
涙が自然と溢れ出す。
ただこのぬくもりがうれしいと思う。
それに気がついたのか、彼が胸の中に抱きいれてくれた。
彼の上着に涙の染みを作る。
黙って背中を優しく撫でてくれる。
顔を見上げ彼を見る。
目と目が合う。
笑っておでこに唇が落ちる。
「眠れ。明日は早いから。」
その優しい響きに安心し、眠りに落ちて行った。
そんな日がもう一つある。
「離婚」と言う言葉を公式会見で発言し、彼からの「心から愛しています」と告げた言葉を無下してから始まった日々。
顔を合わせれば喧嘩をし、それでもいなくなれば気にかかり…。
もっと早く素直に気持ちを伝えていれば変わっていたのだろうかと今なら思うのに。
喧嘩していた日でさえ、その夜と同じように抱きしめられて眠った気がすることがある。
泣いて泣き疲れて眠る毎日。
どれだけ懺悔を口にしてもどれだけ泣いても元に戻れない日。
そんなある夜に、彼は黙って私を抱きしめ眠った。
翌朝、彼は自分の隣に跡形もなくいなくなっていたが、確かにぬくもりを感じた。
彼しかいない。確かに彼だと確信した。
―――お前は一生ここで俺と暮らすんだ。それが俺を傷つけた代価だ―――
そう言われたのに、うれしいと思う。愛されているのだと思う。
その優しさを、彼が不器用なことは知っていたのに、その腕を手放そうとしていた私。
廃妃にはされず、今、別々に暮らす毎日。
いつまた一緒に暮らせるのかは未知数。
こんな夜はあなたのぬくもりを感じて眠りたいと思う。
あの時のように……。
朝、いつの間にかベッドにもぐりこんで寝ていたらしい。
けれど、誰かに抱きしめられて眠ったような気がする。
彼なわけはない。
もちろんチェ尚宮お姉さんでもない。
でも、確かに感じた。
「アルフッド、あなたなの?」
そう聞いても彼は答えてくれない。
―――母国にいる夫が魂だけでも飛ばして抱きしめてくれたのだろうか―――
フッと笑みがこぼれる。
そうだったらとてもうれしい。
窓から日差しが入ってきている。
今日もいい天気だ。
「お姉さん、今日はなあに?」
飛び起きると、扉を開け、元気に飛び出した。
今日はとてもいいことが起こりそうな予感がする。
そんな今日一日。
その予感は的中する。
図書館から出てきて、自転車に乗ろうとすると誰かの視線を感じた。
その視線をたどると、そこにいたのは最愛の人だった。
「シン君だ―!!」
私は大きな声を出し、手をこれでもかというほど振り上げた。
終わり。