葵香の勝手 宮小説の世界

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LOVE PHANTOM episode 12

「この絵がなかったら、シンはとっくの昔にこの皇室を廃止にしていたはずだ。なぁ?」

インはそう言って周りに振る。

振られた方は皆ウンウンと頷いた。

「好きなようにやってチェギョンのところに行けとも俺たちは言ったんだ。
 けれどあいつは首を振ったんだ。その後だよ。
 お前が生まれたのは。どうして子供を作ったんだ?って聞いたらあいつ、なんて言ったと思う?」

ギョンは懐かしそうに言って、チェヨンやヘミョン、皇族の面々に聞く。

しかし、誰もその答えに答えられなかった。

チェヨンもの答えは出せずにいた。

どうして自分をわざわざ作ったのか?

小細工までして、何故なのか?

それは父しか知らないものだと思っていた。

「この絵のように微笑んでいたいからだってさ。そう言って赤ん坊だったお前を抱いて笑ってた。
 同じ笑顔だったよ。お前はこの絵のタイトルと同じように希望なんだよ。
 いつかシンはきっとチェギョンのところに行くだろう。
 それが俺たちの漠然とした思いだった。
 いつ行くのかは分からないけど。いつかは確実に行くだろうとね。
 皇帝イ・シンではなくただの男のイ・シンとして。」

ギョンはそう言って微笑んだ。



          微笑みたいから―――――――――

 
シンプルな理由。

それはなぜか父らしいとチェヨンは思った。

知らず知らずに涙が零れおちる。

うれしいと思った。

父はいつも自分といるときにこの絵と同じように笑っていた。

愛しそうにとても大切なものをお扱うように抱きしめてくれた。

父にとってチェヨンは必要不可欠な人間だった。

「シンの原動力はいつもシン・チェギョンにあった。すべてと言っても過言ではなった。
 脱ぎたくて仕方がなかった皇太子の座にいたのも彼女に誰よりもふさわしいからと
 言われたから続けたまでで。
 皇帝としてこの皇室を廃止せずにいるのも彼女に最後に守ってと言われたらしい。
 廃妃されたにも関わらずにな。」

今まで一切口を開かなかったファンまでもがそんなことを言う。

この韓国皇室は皇帝イ・シンではなく、シン・チェギョンによって守られていた。