葵香の勝手 宮小説の世界

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LOVE PHANTOM episode 26

「チェギョン、人は独りで生きてはいけない。
 シンには君が必要で、君にはシンが必要。
 子供はいずれ巣立っていく。残るのはお互いだけだ。」

ユルはそうだろう?という顔をする。

子供はいつか育っていき、残るのは夫婦だけ。

でも、チェギョンとシンは離婚している。

「チェギョン、帰る時期が来たよ。本来の場所に帰る時が来たんだよ。
 もう戻っていいんだよ。シンに甘えていいんだよ。
 そのくらいの力はシンはもうすでに持ってる。
 君が帰ってそのくらいしたってびくともしない力がね…。
 ご両親にも会いたいだろ?ミンスを見せに行きたいだろ?」

インが言った言葉もわかる。

ミンスのことを言われると何も言えなくなる。

シンが知っていたとは言え、きっと両親には伝わっていない。

おそらく絶縁状態だろう。

ミンスを見せに行きたかった。

あなたの孫ですよと紹介したかった。

勝手に行方をくらまし、勝手に娘を産んだ。

今でも知らせていないのに、どうやって会えと言うのだ。

会わす顔なんてなかった。

でも、どんなことをしても、いつかは会わせたかった。

「会わせたいわ。パパにもママにもチェジュンにも。
 でも、どの面会わせて会えと言うの?
 私は勝手に行方をくらませたのよ。家族を置き去りにして。
 私は親不孝者なの。」

チェギョンはそう言い放った。

でも、そこへフリーシアが声を挟んだ。

「それは違います。リア。子供の不幸を喜ぶ親なんていない。
 顔を見せなくったって、音信不通だったって、どうかどこかで幸せになっていてと願うのが親だよ。
 シンがあなたをここに送ったのだって、幸せになることを願ったからじゃないの。
 あなたもここでシンの幸せを願っていたんじゃないの?
 あなたはどこにでも行けたのよ。私の傍じゃなくたって。結婚もできた。
 でもしなかった。どうして?それは今でもシンを愛してるんでしょ?
 今シンはあなたを求めてるのよ。帰りなさい、リア。ミンスとともに帰りなさい。」

フリーシアは強く言った。

それはチェギョンが母であるスンレに言われているような錯覚を起こした。

まさしく母の言葉だった。

チェギョンはイエスともノーとも言えずにずっと泣いていた。

自分はどうすればいいのだろうとずっと考えていた。

いつかフリーシアに言われた言葉を思い出した。

人はその時最良と考えた道しか進めない――――と。

私が進みたい道はどこなのだろう。

私が行くべき道は…?

「お母さん、お父さんに会いたい。ずっと言えなかったけど、会ってみたい。
 生きてるなら会ってみたい…。」

ミンスもそう言っている。

チェギョンは考えあぐねていた。

チェヨンさん、シン君はそこまで重症なの?」

チェヨンが一番すぐ傍でシンを見ている。

彼に聞くのが一番だとチェギョンは判断した。

「重症です。あなたがいないことが一番重症です。お願いです、一緒に帰ってください。
 今あなたを帰国させるよう、そしてあなたを父の傍に置くように働きかけてます。 
 たとえ一時的に許されたとして、父が目覚めれば何とかします。
 確実にあなたを離さないはずです。お願いです、一緒に帰りましょう。」

チェヨン自身も嘆願した。

もうあんな姿を二度と見たくない。

父のあんな姿を見たくない一心でここまでやってきた。

極秘裏に、どんなことをしてでもやってきた。

父を本来の父らしくするために。

そうしないと一生後悔するから。

そして、チェヨン自身、母に会いたかった。

知らなくてもいいから、母に会いたかった…。

みんなチェギョンの周りにいる者は皆涙を流していた。

チェギョンはその姿をじっと見つめていた。

「ちょっと散歩してくる。それから結論出すわ。」

そう言って、アルフレッドを抱いて、外に出た。