葵香の勝手 宮小説の世界

yahooブログ「Today is the another day」からこちらに移行しました。

可愛らしく愛しい貴方へ

目が覚めた。

昨夜はお互いに早くベッドに入り、そのまま寝てしまった。

どうも二人ともかなり疲れていたらしい。

自分の耳の後ろから彼の寝息が聞こえる。

彼は熟睡中だ。

確か彼の胸の中に抱きしめられて眠ったはずだった。

でも、いつの間にか体勢を変え、後ろから抱きしめられて眠っていた。

少し身体を動かし、時計を見れば午前二時をもうとっくに過ぎていた。


―――もうこんな時間か…―――


時間がすぎるのは実に早い。

「ん~、チェギョン…。」

離れていた腕が力強く自分を抱きしめにかかる。

起きたのかと思い、身体を翻せばスースーと心地よい寝息が聞こえる。

寝言だったのか…。

そんな彼が可愛かった。

「シン君、お誕生日おめでとう。」

聞こえるはずのない当事者に最初に言う。

「ありがとう…。」

小さな声が聞こえた。

寝言なのか本心からなのかわからない。

びっくりしたが、顔を見ればかわいい寝顔だ。

「いらっしゃい、坊や。」

まるで母親になったように優しく声を掛ける。

するとどうだろう。

「ん・・・・」

大人しく胸の中に入ってくる彼。

ぎゅっと抱きしめる。

本当に子供が母親にするように甘える彼。


―――かわいい―――


いつもこうなら…と毒づいてやりたくなる。

しかし、皇帝として子供たちに見せる父親としてではない今も彼。

自分だけに甘えてくれる、そんな仕草を見せてくれる彼がとても愛しい…。



「シン君、本当に誕生日おめでとう。」

今日は彼の誕生日。

あと何時間もすればお互いに忙しい日が幕を開ける。

きっと24時間経ったらこんな風に疲れ果て眠っていることだろう。



――――誕生日おめでとう。


    生まれてきてくれてありがとう。

 
    私を傍に置いてくれてありがとう。


    同じ時代に生まれてきてくれてありがとう。――――




彼を抱きしめて目を閉じた。











end.