リアの誕生―ep.1
楽しい時間はいつの間にかすぐ過ぎてしまい、夕食の時間となった。
レイもメイもこの時にしか食べられない料理にワクワクし、舌鼓を打っていた。
おいしいおいしいと言われるたびに、スンレも府院君も笑顔がほころんだ。
食べ終わると、第二弾となり、全員でゲームに興じた。
そこには仕事から帰ってきたチェジュンもいた。
和気あいあいとゲームで大いに楽しみ、久しぶりに子供と遊んだチェギョンの両親は疲れ切っていた。
けれど、子供たちは元気いっぱいで、その余力はチェジュンへと標的を変えて、また遊びだした。
その両親であるシンもチェギョンもケラケラ笑っているばかりで、ここぞとばかりにチェジュンはかわいい甥っこと姪っ子の面倒を見た。
童心に帰りながら。
遊び疲れたのか、子供たちはいつの間にか目がうつろになっていた。
風呂にも入らず、そのまま寝かそうと考え、シンとチェジュンは子供を運んだ。
もうあのシングルベットはなくなり、4人がかつがつ布団をひいて寝れるようになったチェギョンが独身時代に使っていた部屋に。
運び終え、再びリビングへと舞い戻り、ソファーに座った。
チェギョンも横にいたが、少しいつもと様子が違っていた。
「……シン君、ヤバい。きそう……」
そう言って、顔をしかめる。
それは陣痛の前触れだった。
周りはぎょっとしたが、シンはいたって普通に携帯を取り出し、電話をかけた。
相手はいつもお世話になっているモク助産師だった。
「イ・シンです。すみません。軽く陣痛の兆候がありました。」
『今回は早いですね。どうなさいますか?今どちらにいらっしゃいます?』
そう言われたが、助産師がいるこの病院はここからはるか先。
「今はチェギョンの実家にいます。ほぼ真反対の位置にいるので。」
今から車を呼び、運んでも間に合うかもしれないが、やはりそれは恐ろしい掛けだった。
救急車を呼ぶにしても、万が一マスコミにでも流れれば、問題に発展する。
『では、皇帝陛下。まだまだ時間はかかると思います。
こういう考えはどうでしょう?
以前自宅出産を考えていらっしゃいましたよね?
妃殿下のご実家にいらっしゃるのなら、好都合です。
その方法でご出産してみてはいかがですか?』
それは天から降って湧いてきたとても好都合なことだった。
「では、その方法でしたいと思います。今からこちらに来られますか?」
助産師の介助がないと出産はできない。
『皇帝陛下、申し訳ございませんが、今すぐそちらに伺うことはできません。
こちらが終わり次第伺いたいと思いますが。
万が一のために、昔は地区ごとに助産師、昔は産婆と呼ばれていたものがいると思います。
もしいらっしゃるのであれば、お頼みになってください。
できない場合は、こちらから医師を選出させまして、伺わせます。』
来れないとなれば、方法はそれしかない。
シンは電話したまま、スンレに尋ねた。
このあたりに産婆をしていた者はいないか――と。
すると数軒先に、ソヨというばあさんがいて、昔それらしきことをしていたと聞いたことがあると述べた。
確定的ではなかったが。
「すみません。ソヨというものがいるとのことですが。」
そう伝えると、電話口の向こうのモク助産師は驚いていた。
『殿下、もしかしてその方はレン・ソヨという者ではないですか?
もしその方ならば任せても大丈夫です。
実に優秀なお産婆さんです。』
レン・ソヨという名ですか――と聞いてみると、「そうです」とスンレは答えた。
「その方だそうです。わかりました。その方に頼んでみます。
またあとでお電話します。」
『わかりました。私も終わり次第早く駆けつけます。
ソヨさんの技術はこの目で見たかったので。
では、お待ちしております。』
そう言って、電話を切った。
「すみません。お母さん。その方の電話番号を教えていただけますか?」
そう言うと、もうすでにスンレは紙に書いていた。
その紙を受け取り、シンはまた電話をかけた。
「夜分遅くにすみません。レン・ソヨさんでしょうか。」
『ああ、そうだが、誰だい?』
「わたくし、数軒先のシン家の婿のイ・シンと申します。」
『へえ、いったいわしに何用だい?』
「妻が陣痛の傾向が出ておりまして。
かかりつけの医師は遅くならないとこちらには来られないと言われまして。
義母に聞くと、あなた様は昔お産婆さんをなさっていたと伺いまして、お電話した次第です。
すみませんが、今からこちらに来ていただくことはできますか?」
『…しょうがないね。一国の皇帝陛下に頼まれたら。
すまないが、そこにいるだろうボンクラ親父をよこしてくれないかい?
年取っててね、道具とかもてないんだよ。』
「わかりました。そちらに伺います。では。」
そう言って、電話を切った。
「お父さん、すみませんが、そのソヨさんのところまで、迎えに行ってください。
ご指名です。」
オロオロしている府院君に向かってそう伝えた。
それはほぼ命令だったが。
府院君はそのまま出て行き、チェジュンも一緒についていった。
つづく・・・
レイもメイもこの時にしか食べられない料理にワクワクし、舌鼓を打っていた。
おいしいおいしいと言われるたびに、スンレも府院君も笑顔がほころんだ。
食べ終わると、第二弾となり、全員でゲームに興じた。
そこには仕事から帰ってきたチェジュンもいた。
和気あいあいとゲームで大いに楽しみ、久しぶりに子供と遊んだチェギョンの両親は疲れ切っていた。
けれど、子供たちは元気いっぱいで、その余力はチェジュンへと標的を変えて、また遊びだした。
その両親であるシンもチェギョンもケラケラ笑っているばかりで、ここぞとばかりにチェジュンはかわいい甥っこと姪っ子の面倒を見た。
童心に帰りながら。
遊び疲れたのか、子供たちはいつの間にか目がうつろになっていた。
風呂にも入らず、そのまま寝かそうと考え、シンとチェジュンは子供を運んだ。
もうあのシングルベットはなくなり、4人がかつがつ布団をひいて寝れるようになったチェギョンが独身時代に使っていた部屋に。
運び終え、再びリビングへと舞い戻り、ソファーに座った。
チェギョンも横にいたが、少しいつもと様子が違っていた。
「……シン君、ヤバい。きそう……」
そう言って、顔をしかめる。
それは陣痛の前触れだった。
周りはぎょっとしたが、シンはいたって普通に携帯を取り出し、電話をかけた。
相手はいつもお世話になっているモク助産師だった。
「イ・シンです。すみません。軽く陣痛の兆候がありました。」
『今回は早いですね。どうなさいますか?今どちらにいらっしゃいます?』
そう言われたが、助産師がいるこの病院はここからはるか先。
「今はチェギョンの実家にいます。ほぼ真反対の位置にいるので。」
今から車を呼び、運んでも間に合うかもしれないが、やはりそれは恐ろしい掛けだった。
救急車を呼ぶにしても、万が一マスコミにでも流れれば、問題に発展する。
『では、皇帝陛下。まだまだ時間はかかると思います。
こういう考えはどうでしょう?
以前自宅出産を考えていらっしゃいましたよね?
妃殿下のご実家にいらっしゃるのなら、好都合です。
その方法でご出産してみてはいかがですか?』
それは天から降って湧いてきたとても好都合なことだった。
「では、その方法でしたいと思います。今からこちらに来られますか?」
助産師の介助がないと出産はできない。
『皇帝陛下、申し訳ございませんが、今すぐそちらに伺うことはできません。
こちらが終わり次第伺いたいと思いますが。
万が一のために、昔は地区ごとに助産師、昔は産婆と呼ばれていたものがいると思います。
もしいらっしゃるのであれば、お頼みになってください。
できない場合は、こちらから医師を選出させまして、伺わせます。』
来れないとなれば、方法はそれしかない。
シンは電話したまま、スンレに尋ねた。
このあたりに産婆をしていた者はいないか――と。
すると数軒先に、ソヨというばあさんがいて、昔それらしきことをしていたと聞いたことがあると述べた。
確定的ではなかったが。
「すみません。ソヨというものがいるとのことですが。」
そう伝えると、電話口の向こうのモク助産師は驚いていた。
『殿下、もしかしてその方はレン・ソヨという者ではないですか?
もしその方ならば任せても大丈夫です。
実に優秀なお産婆さんです。』
レン・ソヨという名ですか――と聞いてみると、「そうです」とスンレは答えた。
「その方だそうです。わかりました。その方に頼んでみます。
またあとでお電話します。」
『わかりました。私も終わり次第早く駆けつけます。
ソヨさんの技術はこの目で見たかったので。
では、お待ちしております。』
そう言って、電話を切った。
「すみません。お母さん。その方の電話番号を教えていただけますか?」
そう言うと、もうすでにスンレは紙に書いていた。
その紙を受け取り、シンはまた電話をかけた。
「夜分遅くにすみません。レン・ソヨさんでしょうか。」
『ああ、そうだが、誰だい?』
「わたくし、数軒先のシン家の婿のイ・シンと申します。」
『へえ、いったいわしに何用だい?』
「妻が陣痛の傾向が出ておりまして。
かかりつけの医師は遅くならないとこちらには来られないと言われまして。
義母に聞くと、あなた様は昔お産婆さんをなさっていたと伺いまして、お電話した次第です。
すみませんが、今からこちらに来ていただくことはできますか?」
『…しょうがないね。一国の皇帝陛下に頼まれたら。
すまないが、そこにいるだろうボンクラ親父をよこしてくれないかい?
年取っててね、道具とかもてないんだよ。』
「わかりました。そちらに伺います。では。」
そう言って、電話を切った。
「お父さん、すみませんが、そのソヨさんのところまで、迎えに行ってください。
ご指名です。」
オロオロしている府院君に向かってそう伝えた。
それはほぼ命令だったが。
府院君はそのまま出て行き、チェジュンも一緒についていった。
つづく・・・