葵香の勝手 宮小説の世界

yahooブログ「Today is the another day」からこちらに移行しました。

ありがとう――初日の出の魔法――

元旦、朝早く起きだしたシンとチェギョンは眠っている子供たちを車に乗せ、ある場所まで走った。

それはあの日、シンがチェギョンに2500万年先も・・・といった場所である。

本来ならば、ここは格好の初日の出を見られる場所。

しかし、行ってみると自分たちをのぞいて誰一人といなかった。

「シン君、もしかして・・・。」

チェギョンはその先を言おうとしたが、シンが自分の口に指を立て、ほほ笑んだ。

『それ以上しゃべるな』ということね。

シンの意味合いを悟ったチェギョンは何も言わず、夫妻は子供たちを車から降ろした。

そして、あの時と同じようにベンチに座った。

「もう少しで明ける・・・。」

シンはそう呟き、子供たちを起こしにかかった。

「レイ、起きろ!」

レイを揺さぶり起こそうとするが、レイはまだ夢の中をさまよっている。

何度か揺さぶっていたら、やっと少しばかり眼が開いた。

「パパ~、なに?」

目元をこすりながらまだ眠たそうである。

一方のチェギョンはメイを起こそうとしていた。

こちらもやはりなかなか起きない。

レイは少しばかりの陽の光に目をパチッと開け、満面の笑みを浮かべた。

そして、傍らのメイを起こそうとした。

すると、メイも気づいたのか、眼を開き、同じように笑みを浮かべた。

二人の眼が開いたころ、徐々にではあるが太陽が昇り始めた。

「パパ~、すっごーい!!」
「ママ~、きっれーい!!」

そんな子供の素直な感想に微笑むシンとチェギョンであった。

そこにいるのはごく普通の家族の姿だった。

「シン君、忙しいのにありがとう。今年最初のありがとう。」

そう言ってチェギョンはほほ笑んだ。

「パパ~、ありがとう!!」
「パパ~、ありがとう。大好き!!」

子供たちにも言われ、シンは思わず涙が流れそうになった。

そんなシンをチェギョンはそばまでやってきて、包み込んだ。

子どもたちは、「パパ、こども~」と優しく叫んでいたが、完全に無視し、夫婦二人の世界になった。

「チェギョン、ちがうよ。君がいてくれたからだよ。こっちがありがとう。」

そう言うと、涙が一滴シンの頬を掠めた。


ありがとう。


それはとっても素敵な言葉。

君に出会わなければ知らなかった言葉。

その言葉の意味を君に出会ったことで、君を愛したことで知ったんだ。


ありがとう。


これからも永遠に君に言うよ。


ありがとう。



とても素敵な言葉。





後日、新聞にとある写真が紙面を飾る。

人払いをしたはずのシンだったが、こっそりと写真を撮った輩がいた。

その写真は皇帝一家が仲良くたたずんでいるものではあったが、あまりにも微笑ましく、

国民はこぞってみな魅入っていた。

一方撮られたシンたちは、噂を聞きつけ、新聞を取りよせ、お互い顔を見合わせ、微笑んだ。



チェギョン、ありがとう―――――



やっぱり魔法の言葉。








fin.