葵香の勝手 宮小説の世界

yahooブログ「Today is the another day」からこちらに移行しました。

子供たちの誕生

お気に入り登録100人目記念奇企画―まりかさんよりリクエス
「レイとメイの誕生のお話」です。

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シンはふと雑務に追われている中、考え事をしていた。

「もうすぐ、第3子が産まれるな」と。

年が明け、あと2か月くらいで生まれるわが子。

お腹がかなり膨らみ、妊婦らしい体型となっていた。

チェギョンは重い重いと唸っていたが。

しかし、シンにとってはとてもうれしいことだった。

「レイとメイの時はどうだったかな?」

そう呟いて思い出し作業にかかった。




レイの時もメイの時も自分が気がついた。

チェギョンは全く気がつかず、元気にはつらつと動き回っていた。

普通、妊婦になると急に好きだったものが食べられなくなるとか聞いていたが、

彼女の場合、好き嫌いせずよく食べていた。

吐き気はこれまたなく、ちょっと眠いくらいで全く妊婦らしい妊婦ではなかった。

結局シンが「生理はいつ来た?」という問いかけに、「ない」と大騒ぎし、発覚。

わかったとたん、「騒ぐな、走るな」と命令したが…効果はいつも通り。

困り果てて、経験者である母親にこっそりと趣き、聞いてみたのだった。

突然訪れた息子に一瞬驚きはしたが、子供のころに向けていたやさしい顔になり、話してくれた。

ヘミョンの時と自分の時の話を。




『最初の時はとてつもない不安がありました。

陣痛を起こし、いつ産まれるのか、どのくらいかかるのか未知数の中でずっと殿下が甲斐甲斐しく世話してくださいました。

それは今でも感謝しています。

しかしながら、生まれた子は男の子ではなかったことがとても申し訳なかったです。

今では最初がヘミョンで良かったと思うけど、あの頃はそういう思いはありませんでした。

誰もまだ親王を産んではいなかったですから。

シンを妊娠していると聞いた時、とてもうれしかった。

性別はその時も聞かなかったけれど、とてもよくお腹の中で動いていたから、きっと男の子だろうと確信してました。陛下はご存じないけれど。

産まれたとき、これで一つの大役を果たしたと思いました。

5歳であなたを放してしまったけれど、それまでにありったけの愛情を与え、受け取ったつもりでいます。

けれど、どこかで手放すのではなかったという思いが自分の中にいまだに渦巻いていることも事実です。

ごく一般の家庭が、家族があたりまえにしていることをあなたやヘミョンにしてあげれなかったことは一生悔いるでしょう。

けれど、これからは皇室もどんどんかわらなくてはいけない。

あなたは数年後には皇帝の座につくでしょう。

慣れない環境でやってきている妃を今以上に大切にしなさい。

出産は女性にとってとてつもない大変な作業です。

慣例ではあなたはお産に立ち会うことはできないでしょう。

出産は女がすることですが、誰の子を身ごもり、産み落とそうと何時間もかけて頑張るのか考えなさい。

今では少なくなりましたが、命を落とす者もいます。

何が必要なのかあなたならわかるはずです。

では、どうすべきかもわかりますね。

妃にはあなたが必要、あなたも妃が必要。

闘って勝ち取りなさい。あなたならできます。

私たちは、あなたの両親は何もできなかったかわりに、協力は惜しみません。

それを覚えておいてください。』

そう言うと、出されたお茶をすすいでいた。

シンにとって、重みのある言葉だった。

こんな話を母親とするとも思ってもいなかった。

これはすべてチェギョンのおかげ。

彼女がいなかったら、母親が自分たちのことをどう思っているのかさえ知らずに時を過ごしていた。

「すごいな。」とシンはチェギョンに感謝した。

そして、すべきことをしようと誓った。

現在は、多くの男性はお産に参加する。

自分は今その権利はない。

なら、取ってみせよう。

チェギョンが安心して産めるように、自分も産まれる瞬間を見てみたいと思った。

それから、シンは奔走し、医師にも相談し、立ち会う許可を得た。

それは一つの革新的なものだった。




シンは出産に関して、『水中出産』という方法をとった。

これを選択したのは、一番は陣痛の痛みが和らぐということ、家族参加型でできるということだった。

その他の理由もあったがこれが重要事項だった。




そして待ちに待った出産の日。

陣痛の間隔が5~6分になり、用意されていた広いプールに抱き寄せるように二人で入った。

抱きかかえるように後ろからお腹のほうへ手をまわした。

チェギョンはシンの差し出された足に手を置き、助産師の指示のもと、いきみ始めた。

陣痛の痛みを和らげるとはいえ、絞り出されるような声はあまりにも悲痛だった。

自分の腕や足に強い力で抑えつけられれば、「こんな思いをしなくてはいけないのか。」と思い、

けれど、自分はできなかったことを今できているという思いに安堵を覚えた。

こんな声を外から聞いて待ってるだけなんて、自分では到底我慢できないと思うだろうと。

彼女も自分たちの愛の結晶を必死で産み落とそうとしている、手助けできているということが

とても居心地良かった。

「妃殿下様、もう少しです。殿下、子宮口の付近に手を差し出してください。」

そう助産師に言われ、シンはおもむろに手を差し出す。

すると、「あー――――――――ッ」とチェギョンはいきみ、するっと自分の手に胎児が産み落とされた。

生まれた瞬間だった。

お湯から掬いあげ、瞬く間に元気に産声を上げた。

移動し、子を腕に抱いた。

「陛下、妃殿下様、おめでとうございます。親王さまでございます。」

助産師に言われた。

そして、そっと鋏を渡され、へその緒を切るように言われ、シンは言われるままにへその緒を切った。

チェギョンはぐったりしたままだったが、顔には安どの表情が伺えた。

産後の処理をしたあと、チェギョンはシンに抱かれ、プールを後にした。

胎児は助産師に預けられ、のちに病室に運んでくるという。

チェギョンは抱きかかえられる少し前、呟いた。

「シン君、ありがとう。」

言われた側のシンはなんとも言えなかったが、口を開いた。

「チェギョン、こちらこそありがとう。よくがんばったな。」

言えるのはこの言葉くらいだった。

チェギョンを看護師に渡し、自分も着替え、別室で待っているコン内官へと報告した。

親王だったと。

一言、おめでとうございますと言われ、すぐさま皇室へと戻って行った。

与えられている病室へと足を踏み込むと、チェギョンが寝かされていた。

もう眠りに入ったところだったが、看護師が親王を連れてきて、腕に抱かせ、お乳を上げてくださいという。

チェギョンは重たい体に鞭をうち、初めてわが子に母乳を与えた。

ふくんだ瞬間、痛そうな顔をしたが、知っていたのかそのまま痛みをこらえて与えていた。

それがレイの時だった。

メイの時は同じように水中出産を選び、レイも同じプールへと入った。

すると、レイは

「ここに来たことがある」と言った。

覚えているのだろうかはわからないが感覚的に覚えているのだろう。

同じように助産師の助言のもとで行った出産。

違っていたのは、胎児が出てきそうになったとき、自分とまだまだ小さな手のレイが手を差し出し、受け取ったということだった。

そして、そのままレイの腕の中に抱かれた。

レイはチェギョンがいきんでいる間、ずっとお腹の中の胎児に話しかけていた。

「メイちゃん、もうちょっとだよ。僕にもママにもパパにも会えるよ。」と。

このときも性別は聞いてはいなかったが、レイはよくお腹に耳を傾けていた。

「レイ、なんでメイなんだ?」

と尋ねると、「ん~とね、明るく笑ってるんだもん。だからメイ。」

そう簡潔に言ったのを覚えている。

あとからよくよく聞いてみると、お腹の子と仲良く会話していたそうだ。

本当かどうかはわからないが。

それが、そのままメイという名前になった。


今度もまた同じやり方をする。

もちろん、何かあった場合は分娩台に上がるはめになるのだが。

メイにも参加させたかった。

神秘なる子供の誕生を。

君もこうして生まれてきたんだよ―――――と。






Fin.

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いかがだったでしょうか?
レイとメイの誕生のお話です。
この中に出てくる水中出産のこと。
調べて書きましたが、デメリットももちろんあります。
興味がある方は、じっくりとご自分で調べてください。
私は出産ももちろん妊娠もしたことがないので、素人が書いたものです。
「ちがうよ~」とは言わないでください。
これはあくまでも作り話です。
あしからず。